2012 Fiscal Year Research-status Report
日本のテレビ討論番組の特徴と性質に関する研究:政治的レトリックと行動への考察
Project/Area Number |
24530156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
FELDMAN Ofer 同志社大学, 政策学部, 教授 (50208906)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 政治的コミュニケーション / メディア / 政治討論 / 政治的レトリック / インタビュー / 談話分析 / 日本の政治家 |
Research Abstract |
本研究は、日本の政治過程の中でもテレビのインタビュー番組の性質と在り方、それにおける政治家(または他の政策決定過程に関わってる人々)のコミュニケーションスタイルに焦点を当てる。特に政治関連のインタビューにおける質問はどういった特色を持っているか、政治家などがどれほどその質問に答えるのか、インタビューされる側としての政治家とインタビュアーとの間にどのような相互作用が発生するかなどを分析し、明確にすることを目的とする。 今年度はテレビの政治関連のインタビュー番組に対するデータ収集を行い、分析しています。研究データは三つの番組(フジテレビ「新報道 2001」、BS朝日「激論クロスファイア」、フジテレビグループ「プライムニュース」)から収集し、毎週始めから終わりまで DVD録画を1年間行い、そして録画したもののテープ起こしを行った上で、全ての「質問」と「回答」を区別し、それぞれについて独自のコーディングシートを作成し、それぞれ「質問」と「回答」を測るものにした。 インタビューする人がどれほどインタビュー自体に影響を与えるかを調べるために、まず質問の特徴や聞き方について注目し、インタビューの質問を二つの大きなグループに分類した。つまり(1)「前書きされた質問」であり、特に物事に対する意見や考え方についての質問や聞かれた物事について答えてからさらに明らかにするための追求する質問、と(2)疑問、平叙、命令、定形動詞に欠けているなど、いわゆる「前書きされていない質問」、なかでも、YES か NO 及び5W1H,WとHで始まる6つの疑問詞 (誰が・何を・いつ・どこで・どうして・どのように)である。コーディングの作業を続ける中、来年度にはさらにインタビュー番組に対するデータ収集およびコーディング化を継続し、日本の政治インタビュー番組の性質と特徴が、欧米の研究と比べて実証的に分析を試みる予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集及びデータ分析という二つの点から考え、現在までの達成度はおおむね順調に進展しているといえる。まずデータ収集に関して、分析対象人数は200人程を予定し現時点では95人分のテープ起こしを終えている。現時点の質問及び回答のサンプル数は既に2000ほどであり、今後4000程度に増やすことを予定している。テープ起こしのうち約半分を終え、コーディングに関しては約4分の1を終えている。 次にデータ分析に関しては、質問と回答の相互作用に関するモデルの構築に取り掛かっている。モデルとしては、回答者の属性(性別、年齢、与野党議員)の他、質問の内容で構成される。また争点については更に細分化され、区別される。こうしたモデルの構築に当たり、独自のコーディングシートを用いており、質問内容の分類について一部見直しが必要であると考えているが、大幅な修正の必要性はないと考えている。試験的に分析した結果、政治家が答えない要因は、YESかNOの二択を迫る質問であること、マニフェストに関する質問であること、そして質問と回答の内容が異なることであると判明している。他方、政治家が答えやすくなる要因は、知識に関する質問、争点に関する質問である。 回答に関しては、送り手、受け手、内容、脈絡という四つの点から測定し、コーディングを行なっている。受け手と内容、内容と脈絡については、相関関係があることが判明している。例えば回答がインタビュアー以外に向けられている場合、回答者のメッセージが不鮮明になる傾向があるといえる。同様に回答者のメッセージが不鮮明な場合、質問に対してまともな回答になっていない傾向がある。 以上のようにデータ収集及びデータ分析が一定程度進んでいることから現在の達成度は順調に進展しているといえる。残るテープ起こし及びコーディングに関しては今年度中に終えることを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策として、さらなるモデルの精緻化及び政治的レトリックの用いられ方を明らかにすることを試みる。モデルの精緻化に関しては、国会議員の政党別、与党議員の大臣、党内役職の有無といったポジションを考慮する。また回答の送り手、受け手、内容、脈絡によって最適なモデルが異なることが予想されるため、それぞれに応じた分析を試みる。政治的レトリックの用いられ方として、話を脱線させる、問題をすり替える、当たり障りのない話題に留める、間接的に答える、話をはぐらかしている等の選択肢を用い、与野党議員、与党議員のポジションにより政治的レトリックの使われ方に違いがあるのか考察する。 いかなる属性の人物が、いかなる質問のときに答えない傾向があるかを調べることには、二つの大きな意義がある。一つ目は政治に関する質問に政治家が答えないことにより、有権者が政府・与党への監視を強めることに繋がることである。有権者は選挙と選挙の間、政府・与党に対する監視を絶えず行なっている。政治家が答えをはぐらかすことは、明確な姿勢を有権者に示せないことの現れであり、政府に対する不信を高めることとなる。二つ目はコミュニケーション論に関して、質問の特徴や聞き方、回答の答えない理由、レトリックの用いられ方を調べることにより、インタビュアーとインタビューされる側の相互作用を明らかにすることにある。こうした談話分析を行うことにより、インタビュアーの質問の善し悪しや政治家の話法が明らかとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画として、今年度に引き続き、データ収集のためのテープ起こしやコーディング・データ入力といった人件費に予算を当てる。人件費の他、物品としてテープ起こしに必要なDVDの購入、またデータ分析にあたり、統計解析ソフト(IBM SPSS Statistics)の購入も検討している。
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Research Products
(3 results)