2013 Fiscal Year Research-status Report
自治体の「平和政策」の実態に関する包括的調査と地域からの安全保障に関する考察
Project/Area Number |
24530158
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池尾 靖志 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (20388177)
|
Keywords | 自治体 / 平和政策 / 安全保障 / 非核 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自治体の「平和政策」に関する実態を調査することによって、各自治体の「平和政策」の取り組みを明らかにし、地域から安全保障の問題にかかわることの意味を問うことにある。2年目にあたる平成25年度は、全国の基礎自治体すべてに、郵送方式でアンケート調査票を送付し、1回の調査で未回答の自治体に対して、再度の調査依頼をしたところ、全体で71.9%の回収率を得た。これは、1994年に研究代表者が行った同様のアンケートと比べても遜色のない数字である。 1994年当時から、自治体の数は、「平成の大合併」により減少したが、「平成の大合併」以降に、全国の自治体に対して行う調査としては、今回の調査ははじめてである。また、1994年から2013年の間に、広島・長崎両市が提唱する、トランスナショナルな自治体ネットワークである「平和首長会議」(2013年8月に改称)に、日本の自治体からも1448の自治体が参加するようになった。このため、平和首長会議の提唱する、核兵器のない世界を実現するために、日本の自治体がどの程度、真剣に取り組んでいるかを調査項目の中に盛り込むなど、本調査は、地域から「平和」を発信するための基礎データともなりうるものである。2014年度は、この調査をもとに、分析とさらなる調査を行い、地域から安全保障の問題にかかわろうとする際の、自治体の可能性と限界を探り、中央政府と地方政府とのかかわりを考え、学会報告をすることとしている。2014年5月には日本地域政治学会において、2014年10月には日本政治学会で報告が決定しているほか、2014年8月には、イスタンブールで開催予定の、国際平和研究学会(IPRA)で、日本の現状について報告することも決定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年に実施予定の、自治体の「平和政策」に関する調査は、ほぼ予定通りに進めることができた。各都道府県によって回収率のばらつきがみられるものの、全体としてみると、1994年のアンケート調査と同程度の回収率を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)2014年度は、2013年度に行ったアンケート集計の分析を行い、さらなる調査やヒアリングが必要な自治体に対して、追加調査を実施する。 2)2014年度は、沖縄県において県知事選挙が予定されているほか、与那国町での自衛隊基地建設などがはじまろうとしていることから、沖縄県の情勢を集中的に分析する。沖縄県では、現在もなお、米軍基地が集中し、南西諸島には、防衛力の強化を目的として新たに自衛隊駐屯地が配備されようとしている。そのことによって、地域住民が二分される状況も生まれ、自治体としても住民対応に迫られることとなる。 防衛力強化の理由としては、中国に対する脅威が挙げられているが、果たして中国の脅威はどの程度なのか。あるいは、中国から日米安保体制はどのように見えるのかを探るべく、今年度は、沖縄に中国の平和学者を招聘し、沖縄の安全保障研究者・現代沖縄史研究の権威とパネル・ディスカッションを実施し、専門的知見を得る機会を、一般市民にも公開する。 3)なぜ、自治体が、国家の専管事項とされている安全保障の問題に対してコミットするのか、その根拠は何かに関する理論研究をさらに進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンケート調査を1回行う予定であったのが、回収率を高めるために、未回答自治体に対し、再度アンケート調査を行ったため、不足額が生じる可能性があり、前倒し請求を行った。しかし、アンケート集計のために雇用したバイトの勤務時間数が思ったほどではなかったので、若干の余りがでた。 次年度使用額が生じた分については、今年度も継続して行う安全保障研究の文献購入費に充当する予定である。 平成26年度の助成金については、安全保障研究の文献購入費、アルバイト雇用(研究補助)に伴う人件費のほか、今年6月に沖縄で開催予定のシンポジウムにかかる費用(外国人研究者の招聘費用、会場使用料、専門的知見の提供に伴う謝金など)、研究成果の学会報告にかかる交通・宿泊費などに充当する予定である。
|