2012 Fiscal Year Research-status Report
地域コミュニティによる小規模公共サービス供給の可能性―自治体内分権の比較事例分析
Project/Area Number |
24530159
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳久 恭子 立命館大学, 法学部, 准教授 (60440997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗本 裕見 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特別研究員 (00449539)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 自治体内分権 / 公民連携 / 地域自治区 / 上越市 / 宮崎市 / 高松市 |
Research Abstract |
自治体内分権,なかでも地域住民による小規模公共サービスの供給可能性を検討するために,本年度は,定期的な研究会にあわせて,2件の継続調査と新たな調査対象を選定するための予備調査を2件行った。 継続調査とは,研究代表者と分担者が平成21年度~23年度に行った基盤研究C「公民連携の促進/阻害要因―地縁型団体・テーマ型団体・地方政府の連携パターン分析」で扱った上越市,宮崎市の地域自治区の実践を追うもので,各種団体の連携を促すためのインフォーマルな制度がどのように築かれ,修正され,機能しているかを確認した。上越市浦川原区では,NPOと町内会の連携を図るために作られた「地域づくり振興会議」のあり方が再争点化し,修正が決められた。短期間での見直しは,行政ではなく,住民組織が公共サービスを提供する場合,安定的な供給を保証する体制づくりが容易でないことを示唆している。すなわち,地域における公共サービス提供の可能性を知るには,団体間の連携のパターンの変化と継続を経年的に確認し,どのように課題を克服したかを理解する必要があるとする,本研究の着眼が的を射たものであることを示している。同様のことは,宮崎市の青島や佐土原においても観察されており,当初成功例と思われた連携のパターンの挫折を検討するという新たな課題を得ることもできた。 次いで,予備調査であるが,愛知県豊田市と香川県高松市を対象に実施した。2市はともに自治体内分権の先進地域として知られているが,高松市は県庁所在地ということもあってNPOが独自の発展を遂げている。上越市,宮崎市はいずれも地縁組織が中核的役割を果たしていることから,これらの比較は各種団体の間で形成されるネットワークの異同を明らかにすると予想される。平成25年度から本格的な調査を実施するうえで有用な作業になったと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,自治体内分権という現象を,地域における小規模公共サービスの供給可能性という観点から捉えることを目的とし,複数のケースを比較することでその実態に迫ろうとするものである。 平成24年度は,9月に宮崎市,3月に上越市で調査を行い,人事異動や任期付職員の入れ替わりといった人的変化が地域の実践にどのような変化を与えているか,また,地域における団体間の連携を促すために作られた非公式の制度の実態,およびそれを機能させるための課題などを知ることができた。インタビューで得た情報は,こちらが予想しなかったものでもあり,その検討とさらに詳細な調査が翌年度の課題として残された。 これとは別に,本年度は新たな調査対象を選定し,その判断が有効かどうかを確認するための予備調査を行った。調査そのものは,平成25年度から本格化することを予定しており,その過程で修正を迫られる余地は残されているものの,現在のところ,今回対象に決めた高松市から有用な比較分析の結果が引き出せると考えている。 以上のことから,平成24年度の研究は「おおむね順調に進展している」という達成状況にあると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様に,研究代表者と分担者で定期的に開いている研究会で課題を共有しつつ,調査に向けた準備,調査,事後の成果確認と課題の洗い出しというサイクルを核とする研究体制を保持する。 平成25年度については,国内調査にあわせて海外調査を実施するため,十分な準備期間をおき,それぞれの調査で有意義な結果を得られるよう努めたい。 本研究はヒアリング調査を複数行うことを予定している。実施の際には,個人情報保護法を順守し,細心の注意を払って臨みたい。また,対象事例に限らず,自治体内分権や公民連携の先進例については積極的な情報収集を行いたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の調査およびその検討から,地域住民による公共サービスの提供のあり方をより詳細に知るには,インタビューのみならず,ワークショップなども有効であるとの考えに至った。上越市については,大島区,浦川原区,安塚区の地域協議会委員,区総合事務所職員などからなるワークショップに実際参加しており,そこで築いた人的ネットワークを生かしながら,参与観察を続けることが有効でないかという実感を得ている。そこで,平成25年度は調査期間を増やし,地域課題の発見と共有がどのように行われているかという参与観察を行うことを予定している。 くわえて,当初から研究計画に掲げていた,公民連携の先進例といわれるイギリスにおける調査を充実させたいと考えている。 平成24年度から繰り越しは,国内外の調査費用に充てること第一とし,それに関係する文献購入などを合わせて行いたいと考える。
|
Research Products
(4 results)