2013 Fiscal Year Research-status Report
暴力に抗するラテンアメリカ社会:リージョナル・ガヴァナンス構築の視点から
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24530160
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松下 冽 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50229465)
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Keywords | 越境型暴力・犯罪 / 人間の安全保障 / 民主的ガヴァナンス / 国家ー市民社会関係 / アソシエーション / NAFTA / 急進的ポピュリズム政権 / ローカル・コミュニティ |
Research Abstract |
平成25年度は9月3日~28日の期間にメキシコ・シティー、カラカス(ベネズエラ)、キト(エクアドル)、ボゴタ(コロンビア)を訪問し、大学をはじめとした諸機関の研究者、JAICAの現地スタッフ、NGOの活動家と交流し、またスラムを含む現地の社会状況を調査した。以上の訪問国は、本研究課題の「暴力に抗するラテンアメリカ」についての研究を遂行するうえで焦点となってきた地域である。すなわち、越境型暴力の拡大、麻薬や武器の拡がりが市民社会を脅かし萎縮させるメカニズム、ポピュリズム型民衆動員と市民社会及び民主主義が緊張する社会状況、民主的ガヴァナンス構築に対する「左翼」政権の評価、新自由主義的政策の社会への浸透と関連した政府の社会・経済政策における市場の位置づけなど、現地社会状況と市民意識の現地調査を踏まえなければ分析できなかった研究成果を得ることができた。 『世界開発報告2011』は「紛争、安全保障と開発」をテーマとして設定し、暴力の連鎖を打破するためには、ガヴァナンスの弱さ、貧困、暴力の反復的な連鎖の克服を緊急課題に挙げている。これは本研究課題と一致しており、上記の現地調査の積極的意義を確認するものとなっている。なお、本研究では分析アプローチとして「人間の安全保障」概念有効であると考える。具体的な研究実績としては以下のものがある。 ①「交差するガヴァナンスと「人間の安全保障」──グローバル・サウスの視点を中心に──」(松下冽・山根健至編『共鳴するガヴァナンス空間の現実と課題:「人間の安全保障」から考える』晃洋書房,2013年10月、1-22ページ) ②「市民社会と民主主義は越境型暴力に耐えられるか──NAFTAにおける平和的ガヴァナンス構築──」(松下冽・山根健至編『共鳴するガヴァナンス空間の現実と課題:「人間の安全保障」から考える』晃洋書房,2013年10月、186-207ページ)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するためには現地調査を継続的かつ広範囲に実施する必要があるが、時間的・物理的制約の点で十分実施できていない。この不十分さは様々なメディアや資料・文献で精力的にカバーしている。21世紀型暴力のである典型である越境型暴力や犯罪はグローバル化や新自由主義の拡がりとも関連している。同時に、「リスク社会」の社会的・精神的側面も考察する必要があるが、この検討は今後の課題でもある。 本研究代表はガヴァナンス論、民主主義論、国家ー市民社会関係論などについてはかなりの蓄積があり、これまでの現地調査と合わせておおむね順調に進展していると評価できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、第1に、現地調査の量的・質的拡大であろう。当初の研究実施計画で含まれているアルゼンチン、チリ、ブラジルでの現地調査が今後重要である。これらの研究対象国は、これまでに実施したメキシコ、ベネズエラなどと暴力の性格に関して類似点と相違点がある。この分析は当然、各国の市民社会、民主主義、国家ー市民社会関係、社会運動などの違いから生じているであろう。比較分析の視点から、今後の現地調査の結果を検討することは「暴力に抗するラテンアメリカ」政治・社会論に貢献できよう。 第2に、本研究課題の性格から、一般に入手可能な資料・データや文献からだけでは暴力や犯罪の全体像を把握できないであろう。したがって、現地調査と関連させて、特別の現地ネットワークを強める必要があろう。 第3に、暴力や犯罪に関する理論的検討を構造的・歴史的に、またディシプリンを超えて行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アマゾンを通じて発注していた研究課題関連の数冊の洋書の発行予定日が出版元の出版計画での事情で延期となり、2014年度中の発売となったためです。 上記、発注済み文献は今年度中に刊行される予定である。2014年度の研究計画では、「暴力に抗するラテンアメリカ」を各国の市民社会、民主主義、国家ー市民社会関係、社会運動などの違いと関連づけて考察することの重要性を踏まえて研究スケジュールを進める。こうした比較分析の視点から、今後の現地調査の結果と文献的整理と理論的考察を結合してを検討することは「暴力に抗するラテンアメリカ」政治・社会論に貢献できよう。 文献が到着次、上記の研究推進のために活用したい。次年度使用額(合計1,118,649円)は、物品費に350,000円、調査旅費に600,000円、人件費・謝金に100,000円、残りをその他に使用し今後の研究を進める。
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Research Products
(4 results)