2014 Fiscal Year Research-status Report
暴力に抗するラテンアメリカ社会:リージョナル・ガヴァナンス構築の視点から
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24530160
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松下 冽 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50229465)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 越境型暴力 / 重層的ガヴァナンス構築 / 市民社会 / 社会的メルコスール / 国家ー市民社会関係 / 社会運動 / 多様化する「左派」政権 / 「左翼」ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年2月21日から3月11日までメキシコ・シティ、ブエノスアイレスおよびラプラタ市、モンテビデオ、そしてサンティアゴを訪問し、本研究課題である「暴力に抗するラテンアメリカ社会」をリージョナル・ガヴァナンス構築の視点から有効な調査を行った。。 マフィアによる麻薬や武器の取引による暴力の拡散を抑止できないメキシコでは、研究者、市民との交流や関係資料の収集に成果があった。アルゼンチンではラプラタ大学の教員・学生、議員とリージョナル・ガヴァナンス構築におけるメルコスールの役割、可能性について意見交換を行った。チリではピノチェト軍政後に進められた民主化の現状および限界を実感できた。チリの「左派」政権は「埋め込まれた自由主義と萎縮する民主主義」ともいえるのが現状であろう。 ラテンアメリカの「左派」政権の実態は多様であり単純化できない点は、昨年度のベネズエラ、エクアドル訪問に続く、今年度の調査でも確認できた。こうした「左派」政権の多様性を分析するには、いわゆる「ポピュリズム」概念で分析するのではなく、各国の国家・市民社会・市場の相互関係を具体的に検討する必要がある。この視点からの具体的な研究実績として次の論文がある。 ①「ラテンアメリカ「新左翼」はポピュリズムを超えられるか?(中)──ポスト新自由主義に向けたガヴァナンス構築の視点から──」(『立命館国際研究』第27巻2号、2014年10月。51-83) ②「ラテンアメリカ「新左翼」はポピュリズムを超えられるか?(下)──ポスト新自由主義に向けたガヴァナンス構築の視点から──」(『立命館国際研究』第27巻3号、2015年2月。71-116)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究対象地域への訪問機会が与えられ基本的資料は収集できている。しかし、21世紀型暴力の典型ともいえるラテンアメリカの越境型暴力はグローバル化の一面を反映しており複雑かつ重層的である。また、この暴力は物理的であるのみならず、「リスク社会」の社会的・精神的要因をも考察する必要がある。加えて、現状把握を前提に暴力の歴史的・理論的考察が不可欠になる。この面での研究の不十分さを認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成27年度はこれまでの研究成果をまとめ出版したい。そのため、今後の研究の推進方策として以下の点に焦点を当てたい。 第一に、リージョナル・ガヴァナンス構築の可能性と有効性(例えば、メルコスール)をローカル・ガヴァナンスと結びつける視点を重視し、その具体的連携の事例を本研究課題に組み込む。この点と関連して、第二に、アソシエーションのネットワーク、連携型の社会運動の役割を幅広く考察する必要がある。第三に、越境型暴力に抗するには重層的なガヴァナンス構築が不可欠であろう。すなわち、ローカルとリージョナルなレベルのみならずグローバルな契機が重要になろう。この点で、ラテンアメリカの場合、米国とキューバの動向が注目されよう。最後に、前項の「現在までの達成度」で触れた点でもあるが、「リスク社会」の社会的・精神的要因および暴力の歴史的・理論的考察を進める課題がある。
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Research Products
(2 results)