2012 Fiscal Year Research-status Report
1990年代以降の地方自治体福祉行政における社会的ネットワークの役割
Project/Area Number |
24530162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
広本 政幸 広島修道大学, 法学部, 教授 (90320019)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 福祉体制 |
Research Abstract |
研究の目的は、1990年代以降の日本の福祉体制を明らかにすることである。そのために、2012年度に行うべきことを、いくつか設定した。 設定したのは、まず、1990年代以降の日本の福祉体制を対象とした先行研究を考察し、本研究が取るべき研究の方針を確認するということである。"Two Views of the Welfare Regime in Japan during and after the 1990"(『修道法学』第35巻第2号、944―937ページ、2013年2月)で、上記の作業を行い、1990年代以降の日本の福祉体制を捉えるには、地域福祉を見る必要があることを、明らかにした。 次に、地方自治体の高齢者福祉費と児童福祉費を従属変数とし、社会的ネットワークに関することがらを独立変数として、重回帰分析を行い、地方自治体の福祉支出と、社会的ネットワークの関係を明らかにすることを課題として設定した。重回帰分析を行うために、社会的ネットワークに関係する変数として、どのようなものを設定するべきかを検討する必要があった。"Recent Studies on Social Networks of the Elderly and of Parents Involved in Child Rearing in Japan"(『修道法学』第35巻第1号、428―418ページ、2012年9月)で、高齢者福祉に関係する社会的ネットワークと、児童福祉に関係する社会的ネットワークの違いを、明らかにした。ここで得られたことをいかし、地方自治体の福祉支出と、社会的ネットワークの関係を明らかにするための分析を行うことにした。児童福祉費の分析を行うことは、まだできていない。高齢者福祉費の分析を行い、1990年代以降の傾向として、社会的ネットワークが不十分な場合に、高齢者福祉費が多くなる傾向を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の課題である、1990年代以降の日本の福祉体制を対象とした先行研究を考察し、本研究が取るべき研究の方針を確認するということはできた。"Two Views of the Welfare Regime in Japan during and after the 1990"(『修道法学』第35巻第2号、944―937ページ、2013年2月)にまとめ、1990年代以降の日本の福祉体制を捉えるには、地域福祉を見る必要があることを、確認した。 次に、地方自治体の高齢者福祉費と児童福祉費を従属変数とし、社会的ネットワークに関することがらを独立変数として、重回帰分析を行い、地方自治体の福祉支出と、社会的ネットワークの関係を明らかにすることもできた。"Recent Studies on Social Networks of the Elderly and of Parents Involved in Child Rearing in Japan"(『修道法学』第35巻第1号、428―418ページ、2012年9月)にまとめ、高齢者福祉に関係する社会的ネットワークと、児童福祉に関係する社会的ネットワークの違いを、確認した。 しかし、地方自治体の福祉支出と、社会的ネットワークの関係を明らかにすることは、十分にできなかった。高齢者福祉費の分析を行うことはできた。しかし、児童福祉費の分析は、できなかった。 児童福祉の分析ができなかった理由の一つは、データの収集に、思いのほか、時間がかかったためである。さらに、例えば、人口という一つのデータを使おうとする場合であっても、異なる方法で得られた複数のデータセットがある。複数のデータセットのうち、どれを選ぶのが最善なのか、検討することに時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、2012年度中に実施する予定であった、地方自治体の児童福祉費を従属変数とする重回帰分析を、2013年度の早いうちに終え、2013年度に実施する予定であった作業に遅れが出ないようにする。すでに、児童福祉費に関する分析を行うためのデータはそろっており、後は、分析を行い、その結果をまとめるという作業を残している。 児童福祉費に関する分析を行った後、2013年度行う予定である高齢者福祉政策の形成に関する研究に取り掛かる。岡山県内の複数の市町村を対象とし、政策の形成に、地域社会の特徴が影響を及ぼしているかどうかを、確認する。この作業を、2013年度中に終える予定である。 そして、2014年度に、児童福祉政策の形成に関する研究に取り掛かる。これも、岡山県内の複数の市町村を対象として、実施する予定である。高齢者福祉の研究と同じように、政策の形成に、地域社会の特徴が影響を及ぼしているかどうかを、確認する。 岡山県の市町村における高齢者福祉政策と児童福祉政策の研究では、市町村が作成する計画を対象とする。行政文書や新聞記事などを収集し、これらの計画に関係する情報を収集する。そして、計画に関係する人物へのインタビューを行う予定である。 最後に、重回帰分析と、岡山県内の市町村の分析の結果を総合し、社会的ネットワークと地方自治体の福祉政策の関係を明らかにする。明らかにしたことから、日本の1990年代以降の福祉体制を、どのように特徴づけることができるのかを説明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度においては、2012年度中に実施する予定であった、地方自治体の児童福祉費を従属変数とする重回帰分析を、2013年度の早いうちに終える。そして、2013年度に実施する予定であった岡山県内の複数の市町村の高齢者福祉政策の分析を行う。 岡山県内の市町村を選んだ理由は、人口に占める高齢者の割合も、人口に占める児童の割合が高いも、相対的に高く、高齢者が多いことで生じる問題と、児童が多いことで生じる問題の両方に取り組むことが、重要な課題になっているといえるからである。このような理由で、岡山県を選ぶことの妥当性を、実質的な研究を始める前に、確認しておく。 そのうえで、市町村が策定した高齢者福祉に関係する計画をめぐる情報を収集し、インタビューを実施し、計画の策定に影響を及ぼしているものを確認する。情報収集は、行政資料と新聞記事を使って行う。計画を策定する際に、重視されていたことや、だれがどのように計画策定に関わっていたかといったことを確認する。そうすることで、注目するべき人物や組織を明らかにする。 注目するべき人物や組織が明らかになったところで、そのような人物、組織の関係者に、インタビューを行う。計画の策定にどのような意向をもち、どのような活動を行い、策定された計画をどのように評価したかといったことを、インタビューで確認する。
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