2012 Fiscal Year Research-status Report
中国・ベトナム・北朝鮮・キューバの経済特区に対する比較研究
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24530164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朴 鍾碩 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (60615293)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経済特区 / 中国経済 / ベトナム経済 / 北朝鮮経済 / キューバ経済 / 立地条件 |
Research Abstract |
本研究は、中国・ ベトナム・北朝鮮・キューバという、「残存社会主義4国」で推進されてきた「経済特区」を、比較的観点から研究することを目的としている。初めの 1年間(平成24年)は、文献研究を中心に推進した。 必要な資料を収集しながら、ある程度読んで、全体像を作りながら、国別に内容を整理して行く段階にある。最初に整理したのは、北朝鮮の場合である。 北朝鮮の特徴は次のように要約できる。北朝鮮は、遅くまで経済特区には否定的な立場を堅持していたが、ソ連・東欧で社会主義体制が崩壊する状況で立場を変え、1991年 12月に最初の特区〈羅津先鋒自由経済貿易地帯〉を設置し、 2002年には、もっと意欲的になって、三つの経済特区を設置した。〈新義州特別行政区〉、〈金剛山観光地区〉、〈開城工業地区〉がそれらである。この過程で注目に値する「戦略的変化」がいくつか見られた。新義州特区の場合は、「自治特区」の形式を取ってその「自主性」を訴える戦略を取っていること、金鋼山特区と開城特区の場合は、「開発業者」を指定して開発を依頼する戦略を取っていること、などである。 これらはある程度賢い戦略と言えようが、問題点も見られる。経済特区戦略を推進しながらも、外部世界(おもに韓国、日本、米国)との関係改善に失敗したこと、特区の立地条件が適切でない場合もあること、などである。 それで、筆者は次のような提言を出した。1)羅津先鋒と新義州の場合、輸出加工地区としてではなくて、貿易地区として開発すべき、2)日本資本を誘致しようとすれば、「元山」を特区として指定すべき、3)「自治特区」としては 、新義州ではなくて「南浦」を指定すべき、4)周辺国との関係改善に努力し、経済特区の発展に有利な環境を作るべきこと。 この研究の重要性は、北朝鮮経済特区の発展過程を理解するのに止まらず、実践的な対策まで提示したことにあると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初年度(平成24年)の計画は、文献研究を中心に推進することであるが、その作業は、特に問題なく進んでいる。 1)資料を収集しながら読んで、特徴を整理して行く段階にある。もともとの私の専門である北朝鮮の場合は、ほぼ整理ができている。 2)研究した成果を学会などで積極的に発表し、ほかの研究者の批評などを聞いて、以後の研究に役にたてようとしている。この面では、予想以外に機会が多くあった。当該の研究支援資金を利用して、「福岡ー釜山」で開かれた「BRIT2012」に参加した。また、ほかの機会もあって、韓国の高麗大学、中国瀋陽の遼寧大学に行ってほかの研究者と議論することができた。 3)「福岡ー釜山」の「BRIT2012」の発表をきっかけに、ロシアのVladibostok大学から "Borders and cross-border processes in Eurasia"という本の一章を書いてもらいたい、という要請があって、「North Korea's Special Economic Zones and East Asia -Focusing on SEZ strategy and location relevance-」を書いて送ったばかりである。 このように、本研究は、順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、特に問題なく計画通り進んでいて、今後の研究ももともとの計画に従って進めようとしている。つまり、第二段階(平成25年と26年)は、現地調査を中心に進めようとしている。中国の経済特区としては、二つの地域を訪問しようとする。一つは、初期に経済特区として重要な役割を果たした南部地域の深川である。他の一つは、現在 (名称として経済特区と呼ばれてはいないが) 中国の対外経済関係で核心地域として浮上した上海である。ベトナム経済特区としては、対外経済関係が活発な南部地方の中心都市ホチミン市と経済特区Phu Quoc-Nam An Thoiを訪問しようとする。北朝鮮経済特区としては、開城を訪問したいと思っているが、政治的不安定のため訪問が難しいので、ソウル及び中国東北地方訪問で代替、補おうとしている。キューバの場合には首都ハバナと観光特区であるバラデロを訪問しようとする(政治的不安定のため訪問が難しい場合には、キューバ研究が盛んなアメリカのフロリダ訪問で代替、補うことができるであろう)。 それで、次の第3段階は、(以後の研究成果を評価する過程で、修正が必要かも知らないが、今の段階の計画では)3年にかけた文献研究及び現地調査を通じて得た情報を整理して、それを公表する機会を設ける。整理及び公表のために、まず平成27年には、(仮称)「残存社会主義4国の経済特区研究会」のようなミニ学術会議を開催しようとする。関連研究者、特に新進研究者を3人程度招聘して行うことは現実性があり、研究ネットワークを構築するのにも有用であろう。続いて、学術会議での発表を整理して論文として発表しようとする。最後に平成28年には、研究成果を総合的にまとめて本として出版しようとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費のうち、1万6726円が残った理由は、一部の品物(外国語の本など)が、手に入るまで、予想より時間がかかったためである。それで、24年度末まで決済が完了できなくなった。それでその分は、25年度に決済されることになる。
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Research Products
(4 results)