2012 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化時代の地域主義と境界線の意味変容ー南東欧と東アジアの比較的研究
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24530168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
定形 衛 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20178693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 境界線 / 新しい地域主義 / 南東欧 / 東アジア |
Research Abstract |
東ヨーロッパの社会主義政権の崩壊による中東欧とバルカンへのアイデンティティの分断とヨーロッパ連合への加盟と非加盟の差異化、また旧ユーゴスラヴィア紛争を経験した後のバルカン地域のさらなる分断状況は、ヨーロッパにおける不安定材料となってきた。南東欧はそうした地域として1999年以降のヨーロッパ安定化協定の対象国となり、またEU加盟の条件の整わない地域は西バルカンとして、さらなる差別化を経験してきた。 西バルカンは周知のように旧ユーゴスラヴィアを構成した共和国の独立後の6カ国(後のコソヴォ独立によって7カ国)からスロヴェニアを除き、またアルバニアを加えた地域である。この地域は冷戦後、それまでとは異なる多くの線引きによって一体性を確保することが困難になってきたところである。しかし、EU加盟条件としてはこうした分断線を乗り越えて新たな地域的協力を目指すことが求められている。 24年度は、こうした分断と協力のせめぎ合いのなかで、南東欧諸国、とりわけ西バルカン諸国がどのような形で、あらたな地域主義を構想し始めているのかを研究した。本年7月のクロアチアのEU加盟に他の諸国が続くことができるのか、また、EUの「拡大疲れ」が言われるなかで、その拡大の意味の変容を捉えようとした。 また、東アジア地域に目を転じれば、韓国、日本、中国の間には、南東欧とは異なる形で、古典的な領域紛争が尖閣諸島、竹島(独島)をめぐって顕在化しており、あたらな地域主義に逆行する現象がみられた。南東欧の状況と東アジアの状況の対照性を、考えることが本年度の課題として新たに浮かび上がったことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、東アジア地域の境界線研究については、あらたな状況の出現(尖閣諸島や竹島の領有権問題)によって、当初予定していた、新たな地域主義と境界線問題にまで踏み込む研究は充分に進めることにはならなかったものの、南東欧地域の境界線問題や新たな地域主義の形成過程における西バルカンの動向やそこにおいて解決すべき課題を発見することができたことは大きな成果であった。 さらに、境界線の物理的、実体的認識から、構成学的アプローチを利用して、問題関心を広げることができたことを考えるとき、研究はおおむね順調に進展できたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、申請者の専攻分野である国際関係史との関連で境界線認識、地域主義の史的展開について研究をすすめていく予定である。とくに構成主義と実証主義の狭間で展開される境界線認識、それにともなうアイデンティティとあらたな地域主義野形成過程に着目し、グローバリゼーションの時代における境界線と地域主義、さらには古典的な領土紛争の性格の変化を論じていきたいと考えている。 また、理論的研究と歴史的研究の相互関係にも目配りしながら、欧米発の境界線論、地域主義論にとどまらない視点を比較研究の視座をつかいながら、東アジアの特質を描くことも射程に入れている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、境界線問題と新たな地域主義の理論研究の叢書を購入するとともに、地域としてはASEAN地域の境界線問題とASEANの統合過程の相互作用について、南東欧との比較で実地調査を考えている。具体的にはマレーシアの東アジア構想とタイの東アジア地域主義構想について、研究城の知己(マレーシア外務省、タイのジャーナリスト)へのインタビューを構想しているところである。
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Research Products
(2 results)