2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化時代の地域主義と境界線の意味変容ー南東欧と東アジアの比較的研究
Project/Area Number |
24530168
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
定形 衛 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (20178693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 境界線 / 新しい地域主義 / 南東欧 / 東アジア / ASEANの流儀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は境界線の意味についてのヨーロッパとアジアにおける意味の異同について、今日進行するグローバル化のなかでの新たな地域主義の文脈のなかで比較しようとするものである。この点から、当該26年度においては、「ヨーロッパとアジア」あるいは「東と西」という観点から、種々の文献を読む作業をおこなってきた。 そのひとつは、文明論的視点としてのキリスト教文明、イスラム文明、さらに仏教文明などの視角から境界の持つ意味をとらえるアプローチである。そのなかで、鈴木大拙の論考を幅広く検討して、仏教文明の視角からする境界認識、そのヨーロッパ文明批判は、本研究を進める上で重要な枠組みとなりうるものであった。さらに、文明論的視点とは別に近代ヨーロッパ政治および政治思想における境界概念、その二分法的視点である「内と外」「自己と他者」「包摂と排除」「先進性と後進性」「優越と劣等」といった枠組みに対して、アジアでは二分法を乗り越える「全体論的」「全一的」認識に特徴が見られることが明らかになった。 こうした認識論的差異から学ぶことで、今後、本研究では「ヨーロッパとアジア」の二分法的視点を超え、「ヨーロッパとアジア」双方を包み込む視点から分析をすすめる観点を獲得したことは有益であった。今後は、境界内の民族および人間の存在、境界外の民族および人間の存在、加えて境界を越える、あるいは跨る民族と人間の存在について、これらを新たな地域主義との関連でとらえることになろう。 また、26年度はクロアチアにおいて地域主義と境界線の研究および資料収集を行うことができたことは有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、南東欧と東アジアの地域主義と境界線問題を、これまでの二分法的な「ヨーロッパとアジア」「東と西」といった比較の枠組みを越えて、全体のなかでの双方の比較、今日の国際状況のなかでより具体的に表現するなら、グローバル化という事象を全体的に捉え、そこにおける南東欧と東アジアの新たな地域主義を理解するとともに、境界線を固定的にではなく、「動くもの」「構築されるもの」「架橋および融合するもの」といった観点から捉える視点をより明確にすることができ、今後の本研究への大きな足がかりとなったことは評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究のまとめに入るがアジアについての実態調が不十分であるので、できるだけ早い時期に東南アジアの境界線について、各地の研究機関を訪問していきたいと考えている。昨年度は種々の国際情勢の変動のなかで実地調査を控えたが、今年度はラオス、マレーシア、タイを訪問し、調査とともに、現地の研究者との意見交換を積極的に行おうと予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた、東南アジア、イスラム圏への現地調査を、ISに関連しての国際情勢の変化から、控えたことにより、想定した予算執行が次年度の繰り越されたものである。書籍購入、国内研究出張、南東欧クロアチア訪問は予定通り行われた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度執行できなかった、東南アジアおよび韓国、中国等への一連の訪問を予定している。
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Research Products
(2 results)