2015 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代の地域主義と境界線の意味変容ー南東欧と東アジアの比較的研究
Project/Area Number |
24530168
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
定形 衛 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (20178693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 旧ユーゴスラヴィア / 南東欧 / 東アジア / 境界線 / 冷戦後 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は最終年度にて、冷戦後のグローバル時代の経済、社会、政治、安全保障の領域での国際的、国家的、地域的な相互依存、相互浸透の急速な進展と従来の境界線の意味の変容について総合的な考察を行った。本研究の対象地域は南東欧と東アジアである。 南東欧は冷戦期には東西対立の分断線が走り、南東欧諸国は東西に分かれて対立した。冷戦後になると「旧東欧」は「中東欧」と「バルカン」への文化的、社会的分断線が顕在化し、再度分断線が引かれ、そのなかで南東欧地域は「バルカン」の一体性の再構築と地域主義の新たな活性化が期待された。しかし、90年代を通じた旧ユーゴスラヴィア紛争は、この新たな地域主義の機会を喪失する過程ともなり、南東欧は、EU加盟の実現から遠のく「西バルカン」なる地域を作りだすに至る。 今日、南東欧においては、あらたな地域協力の必要性、地域的統合の枠組みの創出が必須かつ唯一の地域発展の選択肢として提示されているのだが、グローバル時代の競争経済の進展と各国がおかれた独自の安全保障、国際政治環境のなかで実質的な統合力をもつ地域へと脱皮できないままの状況が続いている。 他方、東アジアに目を転じると、日中韓の三国間では、協力と友好、冷戦期の分断と対立の枠組みは依然として十分に克服されたとは言い難いが、ASEAN地域では各国は経済発展のレベルでの格差や文化などの多様性は残るものの、それらを乗り越えて、経済、政治、社会での共同体形成への実質的形成を具体化しつつある。ミャンマーの民主政体への移管、メコン川流域を中心とした経済協力を動因として、東アジアは現在世界の経済、政治で最も躍動的な地域へと変貌し、冷戦期の境界線を乗り越えた新たな地域主義への形成が進展している。今後も両地域の比較を通じた研究の発展が期待されるところである。
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Research Products
(3 results)