2014 Fiscal Year Research-status Report
多角的国際関係における日露両国の和解プロセスについての基礎的研究
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24530172
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺本 康俊 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00172106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YULIA Mikhailova 広島市立大学, 国際学部, 名誉教授 (00285420)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 外交 / 対立 / 和解 / 協調 / 世論 / 新聞 / ロシア / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、日露戦争後から第1次世界大戦期までの日露関係がいかにして戦争という対立を克服し、協調するに至ったかを総合的に研究するものであったが、研究成果として、先ず、この時期、相互に警戒感が拭えない日露両国とも満州を対象に勢力範囲を設定するという共通する国益が存在したという事情が根底にあった。外交的には、日英同盟、日露協商、英露協商からなる多角的な同盟協商関係による国際協調の構築のためには、日英露3国関係の外交的和解、融和が必要条件であり、そのための外交的接近が行われた。また、当時の辛亥革命による中国の混乱が生まれ、日露両国は鉄道権益の保護などで協力関係を拡大したことなどを考察した。次に、当時のロシア社会では、日露講和条約、それに続く日露協商で確認された日本の平和への意志がどれほど確かなものかという疑念が根強く存在していた。日露戦争時、ロシアで最も人気があった新聞『ルースコエ・スローヴォ』の従軍特派員であったネミロヴィチ=ダンチェンコ(Vas.I.Nemirovich-Danchenko)が日本への旅行とその旅行の成果の発信を行うことによって、当時のロシア国民の対日感情を友好的なものにすることに貢献したことを分析した。即ち、日露協商締結後の1908年再び極東に赴き、満州、日本、朝鮮を訪問し、彼の現地報告は1908年2月から10月まで 上記新聞に掲載され、1916年には『太平洋の古代ギリシャ人』(日本人が古代ギリシヤ人のように自らの力で文明を作り上げたという意味)を出版した。また、日露戦争後、自らの目で日本を旅行、観察し、日本を軍事的視点ではなく、文化・道徳、勤勉性、技術革新などの優れた国民性、大阪毎日新聞社での両国の協力の重要性についての意見交換などを多角的に分析し、ロシア国民に紹介した。こうした動きが日露協商の具現化とロシア国民の日本に対するイメージの変容に大きな役割を果たしたことを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、外交的には日英同盟、日露協商、英露協商からなる多角的な国際協調関係の構築によって、日英露3国関係の外交的和解、融和が必要条件であったこと、世論の面では、日露戦争後、ロシア国内での日本への関心、警戒心、平和回復への懸念が高まる中で、新聞、雑誌等で日本の紹介が行われ、日露関係の改善に貢献したことなどが判明したが、今後、さらに、日露戦争から第1次世界大戦期にかけての日本、ロシア、イギリス、アメリカなどの外交、国内世論等の情勢変化とその背景、それに伴う国際情勢、日露両国の外交関係の変容等を、総合的に分析、検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、日露戦争後から第1次世界大戦期までの時期に於いて、日露両国がいかにして戦争の対立を乗り越え、和解、協調の関係を構築するに至ったかというプロセスと背景を研究することであるが、この研究は、現在の日ロ関係が領土問題等を抱え、外交的協調が困難な状況に陥っていることを打開するための貴重なヒント、提言を与えることとなる。これまでの外交史、世論に関係する歴史的研究を総合的に研究して、今後の日ロ両国の友好的な外交関係の発展という現代的な課題の解決に資することにしたい。
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Causes of Carryover |
本研究に関わる研究、調査を精力的に行ったが、昨年度、公務等の諸般の事情が重なり、必ずしも予定通りに研究が進まなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中に、本研究の資料の収集と分析・検討、そして多面的な角度からの総合的な研究の集大成を行う。具体的には、次年度使用額692,139円を、主として、イギリス(ロンドン国立公文書館等)への海外出張旅費に30万円、国内の東京(外交史料館等、3回程度)への出張旅費に約30万円、マイクロフィルムの購入費約9万円等を予定している。
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