2015 Fiscal Year Annual Research Report
「狭間の地政学」をめぐる広域ヨーロッパ国際政治研究
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24530173
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, その他の研究科, 教授 (10248817)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 狭間の地政学 / ウクライナ危機 / ロシア / NATO / 東方パートナーシップ / ミンスク協定 / 広域ヨーロッパ / 欧州国際秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウクライナ危機の欧州国際秩序へのインパクトについて研究した。主要な結論は、第一に、ドイツの対露認識が劇的に変化した。第二に、アメリカのリバランス政策に基本的な変化はないものの、軍事予算と兵力の中・東欧への再配分に見られるように、米国が欧州の安全保障に再び関与を強めた。第三に、NATOの戦略がグローバル・パートナーシップや域外活動から本来の集団防衛へと戻り、バルトや中・東欧の防衛体制の強化に入った。しかし、冷戦後のNATO戦略へと転換した1990年7月のNATOロンドンサミット以前へ逆戻りしたわけではなく、NATOは1997年のNATO=ロシア基本文書を堅持している。それは、米国とドイツが冷戦への回帰を避けようとしているからである。第四は、NATOのウクライナおよびジョージアへの拡大は当面見送られることになったが、拡大を戦略の一つの柱に据えるNATOは対象を西バルカンへ向けた。第五に、EUは東方パートナーシップを継続しているが、モデル国家として期待されたモルドヴァが不安定化するなど、同政策は未だ成果を出していない。第六は、孤立するロシアは、中国との関係強化、シリア空爆、ウクライナ東部からの主要部隊の撤収などを介して、欧米に対露制裁を解除させようと試みた。しかし、第七は、米国のみならず、ミンスク協定の履行を制裁解除の条件とするEUは今も尚対露制裁を継続している。したがって、第八に、冷戦後の欧州安全保障体制から排除されたロシアをどう扱うかという「ロシア問題」の解決に進展はみられない。第九に、ロシアのクリミア併合により黒海地域の軍事バランスが激変し、ロシアとトルコの関係悪化も加わって、同地域は極めて不安定化した。最後に、諸大国の「狭間の地政学」に位置するバルト海から黒海へと至る地域の安全保障体制に関して、欧米とロシアの間に合意はなく、同地域は不安定な状態が続くことになる。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Japan and GUAM dialogue2015
Author(s)
Shigeo Mutsushika
Organizer
The Second "Japan-GUAM Dialogue"
Place of Presentation
International House of Japan, Tokyo
Year and Date
2015-07-17
Int'l Joint Research / Invited
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