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2012 Fiscal Year Research-status Report

冷戦期の米欧関係とバチカン外交ー国際政治における宗教の役割ー

Research Project

Project/Area Number 24530174
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionNagoya City University

Principal Investigator

松本 佐保  名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (40326161)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywordsバチカン / 国際政治 / 冷戦
Research Abstract

バチカンの国際政治における役割については現代史においては特に冷戦時代が重要であり、アメリカ合衆国の反共産主義をイデオロギー的に支えた。冷戦の起源が1945年であるという従来の見方に対して、バチカンはかなり以前から反共産主義の立場を表明していた。スターリンがヤルタ会談でチャーチル英首相に言った有名な台詞「教皇だって?何師団持っていると言うのだ?」。これは冷戦が終結した現代にとってバチカンの武器なき外交による冷戦への勝利の重みを論じることの重要性を示唆している。それがはっきりと政策に表れてくるのが教皇ピウス12世の時代であり、彼が教皇に就任した1939年以降である。こうした態度はアメリカがバチカンに特使として派遣したマイロン・テイラーとのやり取りではっきりと政策に反映されている。そしてその後のヨハネス23世による第二バチカン公会議も冷戦を意識したものであった。彼はアメリカとソ連の間の緊張感が高まったキューバ・ミサイル危機の仲介を試みた。また彼の後任となったパウロ6世は冷戦構造の中で泥沼化するベトナム戦争に、ジョンソン大統領に乞われて介入する。パウロ6世はイタリア共産党と使ってホーチミンにコンタクトを取り、アメリカの北ベトナムとの交渉を可能にした。そしてヨハネ・パウロ二世はポーランド人教皇としてポーランドの民衆化運動の中心となった連帯を支えた。彼はそのため暗殺未遂などの身の危険を冒して、共産主義を倒したのである。
以上の内容は業績として中公新書から6月に著書として出版される予定である。論文はすでに校正中である。それ以外にイギリスの学会で成果を英語で報告した。宗教、特にバチカンの国際政治における重要性を業績と発表出来た充実した年度となった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要ですでに示したように今年度は海外での史料収集や調査、分析、学会発表、そして著書や論文を執筆したことでかなりのレベルでの研究の目的は達成された。論文だけでなく、著書を英語で発表することが今後の課題である。
また今年度はローマ教皇の歴史的交代など、これによるメディアでの注目あり、新聞などの現在のバチカンの状況を日本の読者にわかりやすく解説する機会にも恵まれた。
日本はキリスト教国でないことからキリスト教が国際政治に与える影響については認識が非常に低いが、本研究が日本の学会におけるキリスト教などの宗教の問題と国際政治の深い関わりが認識されるために大きく貢献しているのではないだろうか。そのため高く自己評価できると言える。

Strategy for Future Research Activity

すでに述べたように日本語で発表する著書を英語で発表することが今後の研究予定である。論文や口頭ではすでに英語で国際学会で発表しているが、著書となるとさらに大きなプロジェクトである。
そのため史料など補足が必要となる。そのためアメリカがバチカンに1939年に派遣した外交特使、マイロン・テーラーの史料をアメリカのワシントン、ニューヨーク・ステイト、ミズーリのトルーマン・ライブラリーなどに出かけて史料を収集する必要がある。また引き続きバチカンや英国の史料も閲覧する。また最近英語で書かれた本研究に関連した研究書が数冊発表されている。これらを入手すると共に、これら研究書の著者と連絡を取り、意見交換や議論を行いたい。ボストンのカトリック大学に在籍しているイエズス会の聖職者で研究者であるチャールズ・オコーナーとはすでに連絡が取れているのでボストンではこの研究者と研究交流が予定されている。アメリカはキリスト教などの宗教と国際政治の関係性を明らかにしようという若手の研究者が何人かいることから、彼らとの研究交流が不可欠である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

すでに述べたマイロン・テイラーの公的、そして私的な史料を収集するためにアメリカ合衆国への旅費が必要である。しかも一か所でなくワシントン、ミズーリ、ニューヨーク・ステイトなど、また研究者との交流のためにボストンなどのアメリカ合衆国のカトリック教徒牙城である地域への出張が必要である。そのため多くの研究費が海外旅費として使われる。また調査旅行に便利なアイ・パッドや、高性能のデジタル・カメラなどの購入のために研究費が使われる予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 2012

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] イギリス外交における文化的プロパガンダの考察、1905~56年2013

    • Author(s)
      松本佐保
    • Journal Title

      国際政治

      Volume: 173 Pages: 1-15

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 英国とヴァチカンのアイルランド問題をめぐる外交関係、1858~70年2013

    • Author(s)
      松本佐保
    • Journal Title

      アジア遊学:特集ヨーロピアン・グローバリゼーションの課題

      Volume: 不明 Pages: 2-13

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Pan-Asianism reactions against the White superiorty network and the origin of the Second World War2012

    • Author(s)
      Saho Matsumoto
    • Organizer
      Constructions of Race and Racism in East Asia-Western Perspective
    • Place of Presentation
      ドイツ防衛大学(在ミュンヘン)
    • Year and Date
      20120912-20120914
    • Invited
  • [Book] アジア主義は何を語るのか:松浦正孝編著の第6章と8章の翻訳及び9章の執筆2013

    • Author(s)
      松本佐保
    • Total Pages
      671ページ中54ページ
    • Publisher
      ミネルヴァ書房

URL: 

Published: 2014-07-24  

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