2013 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期の米欧関係とバチカン外交ー国際政治における宗教の役割ー
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24530174
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
松本 佐保 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (40326161)
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Keywords | 冷戦 / 宗教 / バチカン / 米国 / ルーズベルト大統領 / トルーマン大統領 / 教皇ピウス12世 / キリスト教民主党 |
Research Abstract |
本研究課題二年目であるが、今までの研究蓄積もあったことから昨年6月に『バチカン近現代史』中公新書を業績として出版することが出来た。特に本著第5章では、冷戦時代のバチカンと米国の接近について詳細を論じることで、本研究課題の業績と言える。米国大統領ルーズベルトとトルーマンが個人特使として派遣したマイロン・テーラーについては、掘り下げた調査を行った。オランダのルーズベルト研究所にマイロン・テーラーの史料が一部保管されていることがわかり、こちらに出かけて調査や史料収集を行った。またこのルーズベルト・センターの研究員とも意見交換を行い、本研究に関わる史料の在処についても新しい情報を入手した。 ローマのバチカン市国内のバチカン秘密文書館(Archivio Segreto Vaticano)にも出向き、バチカンと米国との関係に関わる文書をバチカン内の国務省の文書館で、またピウス12世の時代の米国との関係についての史料を主に閲覧・収集した。またイタリアでは、先のオランダのルーズベルト研究所で意見交換をした研究者に聞いた情報を元に、イタリア・キリスト教民主党研究所に保管されている、戦後冷戦期のイタリア政府と米国、バチカンに関わる貴重な史料を入手することに成功した。一般に公開されていない史料であることから、研究者との意見交換によって思わぬ文書の発掘に成功したことになる。冷戦時代の宗教の問題、バチカンとカトリック教会、キリスト教民主党について明らかにするには重要な題材となる。こうしたことから本研究費は主に海外旅費に使われた。 上述の『バチカン近現代史』出版はバチカンの国際政治への影響について日本語で書かれた唯一の書著として高く評価され、読売新聞、朝日新聞、中日新聞などの書評で取り上げられ、本研究費の成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実積の概要に書いたように、本研究費を使用した研究を一部盛り込んだ書著の出版は当初の計画以上に研究が進展していると言える根拠である。これをもとに新聞や学術雑誌での書評や、研究会での発表、講演会の依頼があり、これらの場ですでに本研究課題へのフィードバックを得るに至っている。本研究課題への高い評価、また一部批判点も出ていることから、改善点をすでに示唆されていることは今後の本研究課題の発展にとって重要な段階に達していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度米国での史料収集を予定していたが、時間が確保出来ず代わりにオランダのルーズベルト研究所での史料収集となった。バチカンにも出向き、バチカンは秘密文書館であるためデジタルカメラなどでの撮影や複写が許可されていないため、史料の閲覧した出来ず多くの時間を費やすこととなったので米国に行く代わりにオランダという選択肢となった。しかし米国とバチカンとの関係を明らかにするためには、米国のトルーマンライブラリーでの史料の収集が必至であり、今後は米国に出向いて史料収集する時間を作ることを計画している。つまり米国での調査が今年度でなく来年度に変更となった。
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Research Products
(6 results)