2012 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ政治外交史像の再検討―「伝統」と「革新」の視角から
Project/Area Number |
24530177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
板橋 拓己 成蹊大学, 法学部, 助教 (80507153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 洋介 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (50506152)
妹尾 哲志 専修大学, 法学部, 准教授 (50580776)
葛谷 彩 明治学院大学, 法学部, 准教授 (90362558)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 政治学 / 国際関係論 / 外交史 / 西洋史 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究は、三年間をかけて、近現代のドイツ政治外交史を、史料の実証的分析に基づきつつ、外交路線の「伝統」と「革新」という視角から再検討しようとするものである。初年度である本年度の目標は、研究プロジェクトのインフラを構築し、基本的な問題枠組みと論点の共有を図ることであった。本年度の研究実績は、大別して以下の四点にまとめられる。 1.研究会での理論枠組みと論点の共有。2012年7月21日に成蹊大学にて第1回全体研究会合を開催し、研究代表者の板橋拓己が「伝統」と「革新」をめぐる先行研究を整理し、理論枠組みを提示し、論点の共有を図った。次いで、2013年3月23日に成蹊大学にて第2回全体研究会合を行い、研究代表者の板橋と分担者の葛谷彩が全体の枠組を意識しつつ、個別報告を行い、論点を深めた。 2.史料の収集と発信。研究代表者・分担者が協力して、ドイツ政治史関連の史料を収集した。とくにアデナウアー関連史料については、上述の第2回研究会合において、体系的にリストアップした。 3.研究拠点の整備とネットワークの形成。とくに、研究メンバー全員が参加するメーリング・リストとオンライン・ストレージを立ち上げ、史料や情報の共有を図った。 4.個別研究の深化。上記のように全体の問題意識をすり合わせつつ、各人が個別の研究を深化させた。たとえば、研究代表者の板橋による「『西洋の救済』(1)―キリスト教民主主義・保守主義勢力とヨーロッパ統合、1925-1965年」(『成蹊法学』第77号、2012年12月、17-48頁)は、比較政治学会での報告に基づくものであり、本研究にとっても重要な位置を占める。また、分担者の飯田洋介と妹尾哲志が参加した『欧米政治外交史1871~2012』(益田実・小川浩之編、ミネルヴァ書房、2013年)も貴重な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、三年間をかけて、近現代のドイツ政治外交史を、史料の実証的分析に基づきつつ、外交路線の「伝統」と「革新」という視角から再検討しようとするものである。基本的な研究方法は、①重要一次史料・二次文献の収集・整理・公開、②個別研究の深化、③各研究の比較・総合である。なかでも本研究の特色は、少人数の組織による緊密な情報交換と相互対話である。初年度たる本年度の目標は、研究プロジェクトのインフラを構築し、基本的な問題枠組みと論点の共有を図ることであった。交付申請書の平成24年度研究実施計画と照らし合わせた以下の諸点に鑑み、本研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価できよう。 1.研究会合での理論枠組みと論点の共有。予定通り、年2回、全体研究会合を開催し(2012年7月21日、於・成蹊大学;2013年3月23日、於・成蹊大学)、研究メンバー間で綿密な討議を行い、先行研究の咀嚼と視座の摺り合わせを行った。 2.史料の収集と発信。研究代表者・分担者が協力して、ドイツ政治史関連の史料を収集した。とくにアデナウアー関連史料については、上述の第2回研究会合において、体系的にリストアップした。 3.研究拠点の整備とネットワークの形成。とくに、研究メンバー全員が参加するメーリング・リストとオンライン・ストレージを立ち上げ、史料や情報の共有を図った。 本研究において、計画より遅れている面があるとすれば、唯一つ、ウェブでの情報公開であろうか。しかし、上述のようにコンテンツになりうるものはすでに完成しており、公開にあたって調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究会合を中心とした研究交流を継続しながら、個別研究の深化に努める。個別研究の分担は次の通りである。飯田洋介(研究分担者)は、19世紀後半のビスマルク外交を象徴する「勢力均衡(Gleichgewicht)」の内実を、のちのヴィルヘルム時代の「世界政策(Weltpolitik)」における変容も視野に入れて検討する。北村厚(研究協力者)は、ヴァイマル共和国時代のシュトレーゼマンの「協調(Verstaendigung)」外交について、東西間の「ブランコ外交」という後の時代の批判も視野に入れて検討する。板橋拓己(研究代表者)は、第二次大戦後の西ドイツにおけるアデナウアーの「西側統合(Westintegration)」外交における「伝統」と「革新」の様相を検討する。妹尾哲志(研究分担者)は、1960年代後半から70年代にかけてのブラントによる「東方政策(Ostpolitik)」における「伝統」と「革新」の様相を検討する。国際政治思想・ドイツ外交論を専門とする葛谷彩(研究分担者)は、20世紀ドイツにおける外交論、とくに知識人・ジャーナリストらによる「外交論壇」のなかの「伝統」と「革新」の位相を検討する。 以上の分担研究を進めながら、平成25年度は次の三つの作業を予定している。第一は、定期研究会合の開催である。半年に一回、視座を摺合せ、研究の進捗状況を確認し、ワーキングペーパーなどの報告を行う研究会合を開く。 第二は、ドイツ政治外交史アーカイヴの構築と公開である。史料や文献情報を「ドイツ政治外交史アーカイヴ」として蓄積し、全国の研究者の利用に供するとともに、順次ウェブ上で公開していく。 第三は、ドイツへの資料収集と現地の研究者へのヒアリングである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のように、次年度は、研究会合とともに、各研究分担者による資料収集が重要な研究作業となる。この資料収集に関連し、研究分担者の葛谷彩(明治学院大学)の資料収集費に次年度使用額を充てることにしている。
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Research Products
(20 results)