2012 Fiscal Year Research-status Report
フランス「外交力」の制度的基盤の形成:途上国援助の多国間枠組の構築過程の史的分析
Project/Area Number |
24530186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
鳥潟 優子 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (60467503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外交史 / 援助外交 / フランス外交 / 対米同盟 / 国際関係史 |
Research Abstract |
本研究は、中級国家(middle power)に過ぎない第二次大戦後のフランスが、なぜ時に米国に対抗するほど国際的な影響力を発揮できるのか、という(「外交小国」から見た)素朴な疑問に答えようとする。具体的には、途上国の戦後復興や経済開発を支援する国際的な援助機関等の多国間(マルチ)の枠組みにおいて、フランスが人事や政策決定過程で優越的な影響力を行使する現状に着目し、これをフランスの「外交力」の一方の柱と捉えて、その歴史的起源と展開を明らかにする。そのうえで、ベトナム戦後の東南アジア復興援助構想に起源を発し、欧州統合(EC・EU)や国連、OECD等に関連した開発援助の枠組へと広く伝播していく過程を、仏米英EC等の外交史料で跡付ける。 平成24年度には、ベトナム戦争後を見据えたフランスの復興援助外交に関する研究を完成させるための追加的な史料収集を行い、雑誌論文の項目に記載した2本の論考(査読有)を発表した。またフランスのアフリカなども含む旧植民地に対する援助外交について、今後研究を発展させるために文献調査を行っている。同じく植民地帝国であったイギリスなどの旧植民地に対する外交に関する文献収集・調査も行いつつある。同じ程度の国力を持つミドルパワーの日本やイギリスと比較してこそ、「マルチ」の枠組構築におけるフランス外交の特色が浮かび上がるからである。まず、日英の援助政策の歴史・現状・理論などに関する研究図書を収集するなど、フランスとの比較に備えた準備作業を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、9月及び3月にフランス外務省や国立公文書館等において史料調査を行い、上記の「インドシナ」復興援助開発構想をフランスのマルチ外交の起源と位置づけた実証研究を『西洋史学』247号(日本西洋史学会)で公表した。さらに本研究から発展した「インドシナ」をめぐるフランス外交の政策決定過程をめぐる考察を、『国際政治』172号(日本国際政治学会)において刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
所管のアジア局長として「インドシナ」援助構想を立案したフロモン=ムリスが75年、対外経済局長に転じて以降、ECや国連、OECDなどを通じた「マルチ」での開発援助の枠組の構築をいかに進めたのかをフランス外務省の史料や、枠組構築の舞台となった国連やEC、OECDなどの史料も駆使して、実証的に明らかにする。 フロモン=ムリスの持ち込んだ「マルチ」の国際的枠組みのアイデアに対して、外務省の他部局、更に他省庁がいかに反応し、次いで、これを採用するに至ったか、官僚制内部における政策革新の伝播過程の史料調査についても着手し、平成26年度にかけて調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フランス外交史料集であるDDFや文献史料の一部の刊行が遅れたために、約3万4千円を次年度に繰り越し、これら刊行物を平成25年度に購入することを予定している。 平成25年度には、上記の研究を進めていくために、ポンピドゥー(1969~1974年)及びジスカール政権期(1974~1981年)の大統領府史料をフランス国立公文書館で調査を行い、大臣官房を中心としたフランス外務省での調査も行う。更に、同規模の国力で旧植民地大国であったイギリスの旧植民地に対する援助外交について、イギリス国立公文書館での史料調査も予定している。なお大統領府文書は複写が禁止されており、その場で読み込みメモを取るか、筆写することが必要であるため、まとまった調査期間を要するので、史料調査は夏と冬の休暇中に各20日程度を予定している。
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Research Products
(3 results)