2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530193
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
宇井 貴志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (60312815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武岡 則男 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (80434695)
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Keywords | ゲーム理論 / 意思決定理論 |
Research Abstract |
標準的な経済理論における個人の行動は,単一の選好に基づく合理的意思決定としてモデル化されてきた.しかし現実には,個人が複数の相異なる価値基準を同時にもち.その結果,心理的葛藤に直面することがある.これが誘惑下の自制問題である.相互依存関係にある複数個人の自制問題を分析する理論的枠組みとして,Gul-Pesendorferの意思決定モデルを戦略型ゲームに導入することで「自制ゲーム」を定義し,その応用として以下の研究を行った. まず,友人効果の下でのコミットメントデバイス需要を分析するコミットメントデバイスゲームについて新しい結果を得た.通常財と誘惑財の二種類が存在する状況を考え,他人の誘惑財消費が多い時に,誘惑財からの誘惑が強くなるという仮定をおく(誘惑の友人効果).このゲームの純粋均衡には,コミットメント均衡,非対称均衡,自制均衡の三種類がある.コミットメントデバイスが粗補完財の場合,三種類の均衡のいずれか一つのみ存在し,コミットメントデバイスは通常財であるが,コミットメントデバイスが粗代替財の場合,自制均衡とコミットメント均衡が混在し,コミットメントデバイスがギッフェン財になり得ることを明らかにした. また,自制ゲームの利得関数を構成する規範的利得関数と誘惑的利得関数が凹関数である凹自制ゲームを定義し,一般的な条件の元で,このゲームの純粋均衡が,コミットメント均衡,非対称均衡,自制均衡のいずれかであることを明らかにした.凹自制ゲームの応用として,クールノーゲームにおける共謀とそのための生産調整を分析した.各企業は,自社の生産能力を減らすことにより,将来の減産にコミットすることができる.コミットメントのための費用と,三種類の均衡の関係を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自制ゲームの応用分析を行った.この意味で,平成25年度の目的を達成したと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
凹自制ゲームの不完備情報ゲームへの拡張としてベイジアン凹自制ゲームの研究を行う.完備情報の場合,Gul-Pesendorferモデルによる利得関数をもつプレイヤーは,事後の誘惑が減少するように,ある行動へのコミットメントに対して強い選好を示すことが知られている.しかし,不完備情報の場合,事後の誘惑の程度がわからないため,事後に選択肢を確保しておく方が望ましい場合もあり得る.したがって,不完備情報ゲームへの拡張により,完備情報ゲームとは本質的に異なる戦略的行動を分析することが可能になる.とくに,分析しやすいクラスのゲームとして凹ベイジアン自制ゲームのうち利得関数が二次関数で情報構造が正規分布に従うようなLQG自制ゲームを導入し,これを用いてクールノーゲームにおける共謀とそのための生産調整の分析を不完備情報下に拡張する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に行う予定であった海外出張が,平成26年度に延期されたため. 海外研究者との共同研究および国際学会出席のための旅費に使用する計画.
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Research Products
(1 results)