2013 Fiscal Year Research-status Report
金融市場における情報開示の頻度と企業合併の影響に関する理論と実験
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24530207
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小林 創 関西大学, 経済学部, 教授 (10347510)
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Keywords | 経済実験 / 繰り返しゲーム / 情報の不確実性 / 社会的学習 / 隠れマルコフモデル |
Research Abstract |
本年度は昨年度から引き続き、理論とパイロット実験の結果の乖離をどのように説明するかという点について検討を行った。とりわけ本年度注力したのは、実験データから被験者が採用する戦略を推定するにあたり、従来用いられてきた分析ではなく、きちんと用いている戦略の姿が分かる、有限状態オートマトンの下での状態遷移確率についての推定手法を研究することである。これにより、上述の乖離を上手く説明することができるのではないか、という考えのもと戦略の推定をどのように行うべきかについて議論をした。 ただ、上述したオートマトンの状態は我々研究者が直接観察できるものではなく、被験者が暗黙のうちに各自の中に持つと想定されるものであるため、実験データからそれを推測する必要がある。こうした統計手法は「隠れマルコフモデル」(Hidden Markov Model)と呼ばれるモデルとなる。さらに、隠れマルコフモデルは従来は時系列データに対して用いられることが多く、我々の実験のようなパネルデータに対しては、近年ようやく応用され始めたという段階であり、被験者の異質性や推定にまつわる計算時間を考慮して推定が行えるよう拡張する必要がある。以上のような理由により、困難な点もあるが、そこから得られる成果も大きいと判断し、この方向での研究をおこなった。 具体的には、パネルデータでの隠れマルコフモデルの先行研究の文献調査を行うとともに、関連研究を連携研究者と検討し、我々の分析に応用可能であるか議論した。その結果、いくつかの先行研究を修正することで、推定に時間はかかるものの、我々の望む分析が可能ではないという結論に至り、こちらを引き続き実施していくことになった。 また、理論モデルをもとにいくつかのパラメータでの理論値をシミュレーション分析を通じて割り出し、実験計画の修正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度において実験を計画していたが、それを実施できなかったことがやや遅れていると判断した理由である。なぜ本年度において実験を実施できなかったのかは、主に次のような2つの理由による。 第1に、概要で述べたような推定の手法を用いて経済実験のデータについて推定を行う研究はなく、この部分を詰める作業を行うことが当該研究プロジェクトの価値を高めることになると判断し、その手法についての検討を時間をかけて行うことが優先されると判断した。結果として、その分実験を実施する予定の時間がなくなってしまったということである。 第2に、実験の実施を予定していた大阪大学社会経済研究所での受け入れ研究者である西條辰義氏の異動に伴い、各種被験者募集手続きや実験協力者の確保が煩雑になると判断したためである。具体的には、被験者の募集については大阪大学において西條氏が制作したサイトを用いて被験者の登録と募集を行っていたが、異動に伴いこの管理が別の研究者に移っってしまった。また、実験当日の被験者の誘導等に必要な実験補助者の募集も西條氏を経由して大阪大学の大学院生に協力を予定していたが、こちらのルートから協力を求めるのが難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
実験の実施場所として、これまで通り大阪大学社会経済研究所を第1に想定している。ただ、西條氏に協力を依頼していた分を別のルートを通じて協力体制を構築している。まず被験者管理サーバーの利用については、現在の管理者と利用を交渉している。また、実験補助者の募集については、西條氏と関係性のある大学院生を中心に声をかけており、こちらも現在体制を構築している。 ただ、次年度は最終年度ということもあり、万が一の場合も考えて、関西大学を実験場所の第2候補として準備している。具体的には、関西大学社会学部の小川一仁氏が管理する実験設備を用いて実験を行える用意をしている。その際の協力者としては、小川氏の実験に協力している人の協力を仰ぐ他、研究代表者である小林の関西大学経済学部のゼミ生に協力を依頼している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度実施予定であった実験が、実験施設のある大阪大学社会経済研究所の都合で次年度へと順延となったためである。 順延となっている実験をそのまま行うことで使用する計画である。
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