2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 聡 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (80323905)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ピグー / 厚生経済学 / 功利主義 / 正義 / 福祉 |
Research Abstract |
本研究は、アーサー・セシル・ピグーが構想した倫理・道徳哲学の内在的な研究およびその厚生経済学との関連の考察を目的としている。ピグーの道徳哲学の実質的な内容を本格的に研究したものはこれまでのところ殆ど皆無であったが、拙著(『ピグーの倫理思想と厚生経済学』昭和堂、2011 年)は、この点を正面から扱い、ピグーにおいても確固とした倫理学的知見の基盤があることを主張した。同著で説かれたピグー道徳哲学の重層的理解という観点から、本研究では分析をさらに推し進め、従来のピグー研究では明らかにされてこなかった重要な観念(必要充足原理とそれに基づく分配規準)を浮き彫りにする。そのことを通じて、ピグーの厚生・福祉思想を再検証し、彼の厚生経済学が本来持っていた思想的豊饒性を描き出すことを軸とする。 ピグー厚生経済学では、主観的満足(経済的厚生)の社会総計量(総和)が社会選択の判断基準とされるため、i)分配的正義が考慮されない、ii)主観的満足であることから客観的な境遇が反映されない、という批判がある。これもピグー批判としては定番のものである。これに対して、本研究は、ピグーが経済的厚生(と限界効用逓減)に基づく原理以外の分配原理をも採用していたことを明らかにした。それは、端的にいえば、「必要充足」に基づく分配原理である。この点は、これまでのピグー研究においては全くといえるほど掘り下げられていない。よって、この論点をさらに広げて、ピグー理解の新しい側面を追求した。以上の成果を学会発表および論文を通じて公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的に24 年度では、ピグーの主著の一つ『富と厚生』(1912)の出版100 周年に合わせ、合同の研究発表(セッション)を第76 回経済学史学会全国大会で行った。私と本郷亮氏(関西学院大学)が代表となってセッション「ピグー厚生経済学の再検討―『富と厚生』出版100 周年―」を組織した。同セッションでは、複数のピグー研究者による発表が行われたが、私も本研究の成果の一部を発表した。報告のテーマは、「ピグーの経済思想における必要と分配」である。これは先述の研究実績にあるように、従来殆ど注目されてこなかったピグーの必要観念とそれに基づいた彼の分配原理について論考したものである。セッションでの討論を受けて改訂を重ねながら、当該年度中に一本の論文としてまとめることが出来たことから、ほぼ計画どおりに進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
個人ベースでの研究活動に加え、ピグーを含むケンブリッジの経済思想を再検討しようとする経済学史研究者とのネットワークも活用する。一橋大学経済研究所の西沢保氏が代表者を務める科研の研究プロジェクト(基盤研究A)に研究協力者として(昨年から引き続いて)参加する。具体的に出版計画が進行している最中でもあり、平成25 年中には共同執筆書が刊行される予定である。そうなれば、本研究の成果が一部公表されることにもなる。さらに、合同の国際会議の開催も予定されており、本研究の研究成果を発表する格好の機会が与えられる。 また、必要に応じた資料収集活動を国内外において行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(5 results)