2013 Fiscal Year Research-status Report
連続時間モデルによる金融時系列の長期記憶性分析のための統計理論
Project/Area Number |
24530224
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
田中 勝人 学習院大学, 経済学部, 教授 (40126595)
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Keywords | フラクショナル O-U モデル / 連続時間確率過程 / 最尤推定量 / ergodic case / フラクショナル・ブラウン運動 |
Research Abstract |
連続時間確率過程の代表的なモデルである fO-U(fractional Ornstein-Uhlenbeck)モデルを考察の対象として,ドリフト・パラメータの推定問題を中心に議論した.特に,本研究では,パラメータの値が負の ergodic な場合について,MLE (最尤推定量)の分布を実際に計算した点を強調したい.実際,MLE 自体は,先行研究において導出されていたが,密度関数の計算は,誰も行っていない状況であったので,この点は大きな貢献であると考えている.また,観測区間が無限におおきくなる場合の漸近分布についても考察した.その結果,漸近分布は,Hurst パラメータ H に依存しないことが見出された. なお,LSE(最小2乗推定量)の漸近分布に関しては先行研究があるが,LSE との比較では,H=1/2 では両者は同一であるが,それ以外では MLE の方が優れていることが証明された. 本研究では,さらに,パラメータが 0 という帰無仮説に対する検定問題を考察した.この検定問題は,離散時間モデルの観点からは,単位根検定問題であり,MLE に基づく検定を考えて,その検出力などを計算した. なお,今年度は,フィンランドの国立科学研究所の Norros 教授,および,オーストラリア国立大学の Maller 教授などを訪問して,セミナーを行い,研究内容に関する意見交換をして,有意義な研究交流をすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究成果は,査読付きの学術誌に発表することができた.本研究では,fO-Uモデルにおいて,ドリフト・パラメータが負の ergodic case に限定して議論している点で,制約的である.しかし,得られた内容の貢献度は高いものと考えているので,当初の計画と照らし合わせて,本研究は順調に進展していると判断する.なお,査読付きの学術誌への掲載までには数年のタイム・ラグがあるのが普通であるので,今回は掲載の報告ができないが,投稿中の論文があることも付記しておく.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,fO-Uモデルにおけるドリフト・パラメータの推定問題を考察したい.特に,値が正の non-ergodic case の場合の推定量の分布を導出することを目指したい.先行研究では,LSE の場合の結果が得られているが,MLE に関しては,密度関数の計算や漸近分布の導出は未解決である.さらに,Hurst パラメータ H が 1/2 よりも小さい場合など,さまざまな状況で推定問題を考察する計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大規模な国際会議への参加を予定していたが,本務との都合があわずに見合わせたため. 今年度は,研究期間の最終年度であり,今までの研究成果を海外のいくつかの大学や国際学会で発表する予定である.そのための費用に充当したい.また,論文として,査読付きの学術雑誌への投稿を予定しているので,そのための関連費用として使いたい.
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