2012 Fiscal Year Research-status Report
発展途上国における貧困削減と再生可能資源保全の両立可能性に関する動学分析
Project/Area Number |
24530241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大東 一郎 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (30245625)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生可能資源 / 貧困削減 / 発展途上国 / ハリス・トダロモデル / 経済動学 |
Research Abstract |
発展途上国における「貧困削減と環境保全の両立可能性」を探るため、開発経済学で標準的とされてきた農村・都市の二重経済モデルの農村地域に、国際貿易論・環境経済学で注目されているBrander and Taylor (1997)によるオープンアクセス下の再生可能資源動学を取り入れて、農村での再生可能資源の動学と都市失業率の変動とを統一的に分析できるモデルを構築した。 (1)モデル構築:小国開放ハリストダロ(HT)モデルを基礎に、I.再生可能資源ストック量の調整時間が農村都市間人口移動の時間に比べてかなり長いケース、II.再生可能資源ストック量の調整と農村都市間人口移動の時間が大きくは異ならないケースに分けて、それぞれモデルを構築した。Iでは再生可能資源ストックの動学、IIでは再生可能資源ストックと都市失業率の2変数の動学が得られた。 (2)文献調査:モデル構築作業と並行して、再生可能資源の問題についてより詳しく文献調査を行った。オープンアクセスの下でのBrander and Taylor (1997)論文のモデルを詳しく検討し、動学過程の理解を深めた。 また、環境資源経済学を専門とするハワイ大学経済学部の樽井礼準教授と、上記のモデル分析の方針や論点について意見交換を行った。その際、所有権のあり方と再生可能資源の管理の関係をどのように考えるべきかについて、専門的な見地からの知識・情報の提供を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、(2)文献調査としてオープンアクセス、私的所有制、共有制のモデル分析とそれらの相違についての理解を深めることを予定していた。しかし、所有権のあり方を3通り考察する前に、むしろオープンアクセスの下での再生可能資源管理についてモデルに即して理解を明瞭にしておくほうが、他の2種類の所有権制度の含意を見通すためには有効であろうとの認識を持つにいたった。そこで、オープンアクセスの下での再生可能資源管理のモデルを考察することに多めに時間を割いた。研究全体の進捗はおおむね順調であるが、所有権制度の理解を深めることには今後時間をかける必要があろう。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)モデル分析:モデルI、IIのそれぞれについて、再生可能資源の利用を規制する政策(課税)を採用したとき、どのような条件が満たされるなら都市失業が悪化しないのか、経済厚生が改善されるのかを分析する(政策改革分析)。また、都市失業という労働市場の歪みが存在する途上国で、再生可能資源の最適管理政策を特徴づけることを試みる(最適政策の導出)。 (2)文献調査:再生可能資源の問題についてより詳しく文献調査を行い、オープンアクセス、私的所有制、共有制のモデル分析とそれらの相違についての理解を深める。 Brander and Taylor(1997)のようなオープンアクセス下の再生可能資源のケースについて、再生可能資源の利用抑制政策の効果を分析した論文、あるいは、都市工業に汚染排出を導入し工業汚染規制政策の効果を分析した論文を作成する。それを国内外の学会、ワークショップ、セミナー等で報告しコメントを得て改訂する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究論文の執筆を進めるため、論文作成ソフトを購入する。また、論文発表や改訂に必要な情報・資料収集のための旅費を使用する。
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