2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530254
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野崎 祐子 広島大学, 社会(科)学研究科, 助教 (60452611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 克己 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (80243145)
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Keywords | 保育の質 / 子どもの発達 / Behavioral Problem Index / fatherhood / 育児期の復職タイミング / 家族の不安定化 |
Research Abstract |
本年度の主な目的は、保育の質と子どもの発達との関連についてのアンケート調査ならびに「21世紀出生児縦断調査」を用いた家庭環境と子どもの発達に関する検証である。 (1)アンケート調査の実施 ①調査の依頼(4月~7月):本調査は個人情報に関わる情報を網羅しているため、慎重かつ十分な準備が必要である。そのため、東広島市、札幌市、北海道私立幼稚園協会、東広島市立幼稚園連盟を直接訪問し、説明を行った。②調査票の作成(7月~8月)前年度のパイロット調査や保育所ボランティアを通じて得た情報を元に、調査票を作成した。③実施と回収(9~10月)⑤データ・ベース化(10~12月)⑥結果の発表(1月)専門家2名を招き、公開研究会を開催した。⑥調査の一次とりまとめ(3月)結果の概要をまとめ、 雑誌に掲載した。施設長調査からは、保育士と幼稚園教諭との間に人的資本要因で違いがあることや、保育者に就業継続のモチベーションが失われている可能性などが、保護者調査からは、保育者のスキルや知識には不満を持つ一方で、保育料への支払い意志額は低いことなど、保護者の行動に矛盾があることなどが明らかになった。 (2)公的統計ミクロデータを用いた検証 「21世紀出生児縦断調査」の個票を用いて、家族構成の不安定化(fragile family)や親の就業状態や育児時間(parental resource)と、子どもの問題行動(behavioral problem)との関連について検証を行い、学会で発表した。分析の結果、出生時の父親不在、継父といった家族構成と、子どもの発達との間に因果関係は確認できなかった。また、母親の就業は、乳児期、学童期のいずれも、子どもの問題行動の誘因にななっていなかった。一方で、これまでほとんど着目されていなかった父親の育児参加については、有意な結果を得るなど、示唆に富む結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの達成度は、タイムスケジュール上では「やや遅れている」が、調査・研究内容については、「当初の計画以上に進展」している。項目別の詳細は以下のとおり。 (1)アンケート調査実施:アンケート調査に関しては、関係機関の協力を取り付けるにあたり、当初の計画を上回る時間を要した。主な理由は、保護者の個人情報保護に関する問題である。事前の説明会では、研究目的・趣旨に大きな賛同を得たが、実施となると、保護者からの質問やクレームが来た場合の対応などへの不安から、最終的には協力できないとした団体がいくつかあった。しかし、交渉の過程では、保育、幼児教育の場で実際起きている問題や課題、保護者の意識や動向など観察することができ、保育者・施設長、保護者とのネットワークも構築することができた。また、同様に施設長調査と保護者調査のマッチングが個人情報の特定につながるとの懸念から、当初の調査項目を一部変更せざるを得なかったこと、調査対象地が札幌市まで拡大したことから、広島大学地域経済システム研究センターに協力を要請したことなども実施時期に影響した。しかし、中堅地方都市としては例外的に若年層の人口流入がある東広島市と、保育所不足と幼稚園の経営不振問題とを抱える札幌市との比較が可能となり、当初の計画を超える進展がみられた。 (2)公的統計ミクロ・データによる検証 分析結果は学会での発表、討議を経て広島大学経済学部DPとしてまとめたが、現在のところジャーナル掲載には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アンケート調査 本年度は、研究の総括として、①データ分析と論文作成、②学会・研究会報告を経てジャーナルへの掲載を行う。独自調査を行った以下のような特徴を活かし、精度の高い分析を目標とする。①保育の質に関しては、家庭・施設の両面からのアプローチ。②子どもの発達に関しては、問題行動だけではなく、肥満など健康にも言及し、より多面的な「(心身両面の)アウトカム」の検証を行う。 (2)公的統計のミクロデータを用いた検証 学会報告論文(DP)は、ジャーナル掲載を目的とする。また、2013年度末には、厚生労働省『21世紀出生児縦断調査』データ利用申請を行った。本年度は最新データを用い、問題行動や肥満、健康状態など包括的な「アウトカム」に関する検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンケート調査を依頼する関係機関との調整に時間がかかり、実施時期が当初の予定より遅れた。そのため、公的統計のミクロデータを用いた研究は日本経済学会にて報告したが、独自調査による検証ならびに国内外での学会発表が年度内に実施できなかった。 本年度は、独自調査により得られたデータと、新たに申請して得た公的統計のミクロデータの両方についてそれぞれ検証し、海外を含む学会発表での討議を経てジャーナル投稿を行う。また、本研究の統括として、年度末に報告書を作成する。
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Research Products
(7 results)