2012 Fiscal Year Research-status Report
自己拘束的な国際環境協定の実現に向けての総合的研究
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24530257
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 敏之 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30297618)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境協定 / 自己拘束性 / ゲーム理論 / 提携形成 |
Research Abstract |
平成24年度においては,研究代表者が以前に従事し平成23年度に終了した科学研究費補助金の研究課題「地球環境問題に関するマッチング協定の制度設計」で得られた成果を拡張し,論文"A self-enforcing international environmental agreement on matching rates: Can it bring about an efficient and equitable outcome?"としてまとめ,国際学術雑誌Strategic Behavior and the Environmentに投稿した.複数の研究者による査読を経て,すでに同誌に掲載決定済みであり,平成25年度に公刊予定となっている(研究発表の欄に記載).本論文では,関連する先行研究のレビューにもとづき,以下の3つの拡張を行った. (1) マッチングのメカニズムを公共財供給理論の枠組みで解釈し,マッチングがうまく機能する根拠に関する直観的な説明を与えた. (2) 他の研究者による,汚染規制のための税・補助金政策に関する先行研究と,マッチング・ルールの等価性を指摘した. (3) モデルの中で加盟国が選択するマッチング率がどの国に対しても同じ値をとるという仮定を緩めて,他の加盟国に対する率と非加盟国に対する率が異なるケースを考えても結果が変わらないことを確認した. 上記と並行して,先見的安定性(farsighted stability)という概念を用いて自己拘束的な国際環境協定を分析する研究,複数の均衡が存在するケースの包括的検討に関する研究に着手している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書には,1年目の研究計画として,研究課題の整理および先行研究のサーベイ,およびサーベイにもとづく新しい分析手法の検討・提案を挙げた.課題の整理とサーベイについては十分な進展がみられ,サーベイにもとづいて新しい要素を付け加えた論文の公刊が認められたため,おおむね順調に進展していると判断する. 新しい方法論の提案についてはアイデアはあるものの,まだ分析の途中であり,具体的な成果を論文などの形で発表する段階には至っていない.これは平成25年度中の課題としてなるべく早く達成したい.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記した先見的安定性の概念を用いた研究,複数均衡の検討に関する研究を今後精力的にすすめ,得られた新たな成果を環境経済・政策学会,日本応用経済学会などの学会で報告して,他の研究者の意見をもとに論文を改良していき,学術雑誌への投稿の準備作業を行う.また特定の汚染物質を対象に,ある程度の実証分析を行う.複雑な仮定や関数形を用いた枠組では,モデルの最適解を解析的に導くことはできず,数値計算(シミュレーション)を行わなければならない.さらにアルバイトとして雇用する研究協力者の助けを借りて,現状を正確に理解するために,現実の気候変動問題などに関する協定がどのように推移しているかについて,最新の詳細なデータを収集する. 研究代表者はこれまでに国際学会で本研究テーマにかかわる報告を数回行っているが,そのときに本研究課題と同様のテーマで研究を行っている多数の研究者の知己を得ており,これらの研究者との連携,ネットワークを活用して共同作業を行う可能性も視野に入れる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた学会報告のための旅費が使用されなかったために,およそ10万円分の繰越しが発生した.これを平成25年度分の旅費として使用する予定である.
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