2013 Fiscal Year Research-status Report
自己拘束的な国際環境協定の実現に向けての総合的研究
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24530257
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 敏之 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30297618)
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Keywords | 環境協定 / 自己拘束性 / ゲーム理論 / 提携形成 / 汚染削減技術 |
Research Abstract |
今年度の研究内容は以下の2つのテーマに分類される. (1)先見的安定性をもつ国債環境協定の検討 国際環境協定の安定性について,国々が先見的であり協定を離脱しようとするときにその離脱がもたらす他の国の行動への影響の長期的連鎖を考慮するという仮定のもとで分析を行うことを試みている.解の概念としてlargest consistent setという安定的な提携構造が定義されている.現在のところ,先行研究調査を精力的にすすめており,平成26年度にはこれまで検討してきた協定メカニズムの検討に,先見的安定性という要素を付け加えた成果が報告できる見込みである. (2)汚染削減技術に関する国際協定の検討 汚染削減コストを低減させる新技術に対するR&D投資と技術採択に関する協定が有効に機能するかどうかを検討しており,大学院学生との共著論文"International environmental agreements regarding R&D for abatement cost reduction"をまとめ,数回の学会,研究会での報告を経て,現在国際学術雑誌に投稿中である.本論文の概要は以下の通りである.ある先行研究では協定が存在しない非協力状態において十分な投資がなされ技術が採用されるケースに限り,技術協定が有効に機能するという結果が得られているが,本論文では協定ルールをわずかに変更して技術採択に関する意思決定を個別の国に任せることにより,非協力状態で投資が行われない場合でも,協定が有効になることを示した.協定での合意事項が「投資額」「技術採用」の2つから「投資額」の1つとなりシンプルになる点からも,このルール変更は望ましい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年記した平成25年度の計画では,先見的安定性に関する研究にしか言及しておらず,そのテーマについてはまだ目に見える成果を得るに至っていないが,研究自体はすすんでおり,平成26年度中に成果が得られる予定である.また「汚染削減技術に関する国際協定の検討」という当初の計画になかったテーマでの研究がすすみ,一定の成果を出すことができたことから,当初の計画以上に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては,「研究実績の概要」欄に記した2つのテーマを追求していく.テーマ(1)に関しては分析を進め,今年度中に論文の形にする.テーマ(2)に関しては,6月にイスタンブールで行われる環境資源経済学世界大会において論文報告を予定しており,然るべき改訂を経て学術雑誌への投稿を行う.最終年度として,3年間の研究活動の成果をとりまとめ,次年度以降の新たな課題を模索する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議参加,成果発表のための海外出張旅費の使用を予定していたが,子供の出生という家庭の事情により学会参加の辞退を余儀なくされたことと,1回の出張旅費を科研費以外の予算でまかなうことになったことにより,出張旅費支出が当初より著しく減少し20万円ほどの繰越が生じることになった. 繰り越した分については,今年度の海外出張旅費に充てることが決まっている.
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