2013 Fiscal Year Research-status Report
国際知財取引によるイノベーションの市場化と日本の高付加価値産業の戦略の実証分析
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24530270
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
武智 一貴 法政大学, 経済学部, 准教授 (80386341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 萬里 専修大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
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Keywords | 取引コスト / 輸送費 / 非ホモセティック効用 / スピルオーバー / 生産性 |
Research Abstract |
研究代表者武智は、本年度は市場取引に関する重要な障壁である輸送コストについて分析を行った。コストの測定には産地価格と市場価格が必要である点と市場供給が企業の選択として行われるサンプルセレクションの処理の問題があり、これらを考慮しない分析では、コストが過小に評価される。この識別問題を解決する事でコストの大きさがこれまでに考えられてきたものよりも大きい事が確認される事に加え、企業の市場ごとの価格付けを明示的に考慮することで、その影響の大きさについて分析を行った。市場における価格付けを重要視する場合には、マークアップが市場ごとで異なることとなり、生産者がコスト増大分を価格にすべて転嫁する訳ではないケースを想定する事となる。したがって、データとして得られる市場間価格差は、実際の輸送コストよりも過小に観測される可能性がある。本研究では価格付け行動を明示的に考慮した形で分析を行い、コストそのものの影響はこれまでに考えられてきたケースよりも、より大きい点を明らかにした。 また、分担者伊藤は、技術やノウハウのスピルオーバーの存在とその影響の大きさについて検証を行った。集積の利点として、スピルオーバー効果が存在し、それが生産性を向上させ海外進出を促進させるというものがある。特に、企業の異質性を考慮した研究では、生産性の水準に応じて海外進出する企業とそうでない企業が分断される。その点を、中国企業のデータを用いて検証した。結果として、スピルオーバー効果は存在するものの、その影響はそれほど大きくない点が確認されている。また、輸出企業とそうでない企業の間の相違についても検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、価格データベースの整形を行い、また世界の貿易データベースについても集計を行った。これにより、各種実証研究を行う事が可能となっている。そして、本年度の実証研究の成果は、昨年度までに行い、海外学術雑誌Journal of International Economicsに掲載され学術的に高い評価を受けた研究成果を発展させたものである。そしてその成果はディスカッションペーパー等の形式などで公刊している。また、国際貿易では重要な学会であるEuropean Trade Study Groupで研究成果を代表者、分担者ともに発表しており、学術交流を含め研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、まず第一にこれまでの研究をより発展させる事を行う。市場取引を阻害する要因である取引コストについて、これまでの研究では氷山型という特定化の方法がとられていた。しかしこの特定化の方法は、理論的な取り扱いを容易にする事を主目的としており、実際のコストの構造を反映したものでない事が知られている。しかしながらその取り扱いが複雑なためこれまであまり研究対象として扱われてこなかった。本研究では、これまでに行った研究成果・作成したデータにより、氷山型でないコスト構造についても分析する事が可能になっており、これまで分析されてこなかった重要なコスト構造について新しい知見を生み出す事が出来ると考えられる。 また、技術・ノウハウの移転についても、スピルオーバーといった市場を通じない移転に加え、知的財産権で保護された形の技術・ノウハウの取引についても、国際的な知財保護の強化の影響と関連して分析を行う事が考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会報告を行う回数が予定よりも少なく、また、コンピューターを用いた計算集約的な研究を行う予定であったが、データ作成・コンピューターコード作成の都合により当該年度で行う事が出来なかったため。 学会報告および新規コンピューター環境の整備により、作成したデータセットを用いた計算集約的な研究の推進。
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Research Products
(4 results)