2012 Fiscal Year Research-status Report
インターネット上の情報検索機能によるプライバシー侵害の経済分析
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24530272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プライバシーの経済分析 |
Research Abstract |
平成24年度は、第一にストリートビューに関連する文献の整理を行った。インターネット上のプライバシー侵害にあたるケースとして、SNSやブログに掲載される個人情報(Self-disclosure)、スマートフォンのGPS機能による位置情報、そしてポータルサイトが公共空間から収集する空間情報に関わる問題を整理し、文献のサーベイを行った。 第二に、ディスカッション・ペーパーの修正を行った。一般的な関数による分析の例題として、一次同時関数の効用関数を用いた分析を行い具体的な解を求め政策的な含意を明らかにした。政策的な議論では、空間情報に関する弾力性が大きな意義を持っている。この例題を用い、その意義を明確にした。また、文献のサーベイを拡充し、ディスカッション・ペーパーの一部を修正した。 第三に、台湾とタイでアンケート調査を行った。これらの国では、ストリートビューを導入して一年ほどであり、人々がどのような問題意識を持っているのかを知ることによって、本研究の議論を深めることができるものと考えた。調査方法は、現地アシスタント二人、研究補助要員一人で行い、一軒一軒に住居を回りながらアンケートに回答してもらう形式を採った。したがって、アンケート場所の立地条件を確認しながら(写真撮影)、正確な情報が得られた。サンプル数は、それぞれの国で調査方法の物理的な制約から約120であったが、最低限の数は得られている。データ入力を行い、SPSSで予備的な分析を行った。 最後に、学術雑誌への投稿を行った。エディターが、テーマと分析の面白さを認めたが、関連文献との関係が明確でないことから、研究の継続を示唆した。そのため、再投稿をする予定であり、エディターにもその旨を伝えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の事前の計画は、ほぼ実行した。その上に海外でのアンケート調査を実施した点を考えると、十分な計画達成度であったと自己評価できる。ただし、以下に若干の計画の未達成があった。 第一に、シュミレーションによる分析まではいたらなかった。具体的な関数の設定および計算はほぼ終了したが、パラメーターの特性からある程度の解の性質が分かることから、シュミレーションが最後の残された状態で終わっている。 第二に、アンケート調査のデータ分析が終わってない。データ入力がすでに完了していることから、データ分析の手法の選別・整理が必要とされたままである。 第三に、学術雑誌への受理がなされていない。投稿先は、国際的な雑誌であり、受理されるまでは時間がかかることを考えれば致し方ない点がある。しかしながら、未達成であることにはかわりない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、法と経済学の分野に属し、規制の実行可能性を重視する考察が求められる。そのため、前年に引き続きモデル分析を行い学術的な考察を行う一方で、実際の規制の可能性について考察を行っていく。 第一に、申請時の研究計画にはなかったアンケート調査のデータ分析を終了させ、住民のプライバシー侵害に対する意識の実態について考察する。このように国際的な意識調査を行っている研究者はなく、単なるウェッブ上の意識調査とは違い、具体的な規制を考える上で非常に参考になるものである。必要であれば、追加調査を行う。 第二に、規制当局の動向について調査する必要がある。地方自治体の関係部署でのヒヤリングや関係している法学者との意見交換を通じて、経済学的な側面のみではない考察を行っていく。 第三に、プライバシー権利意識の高いEUの専門家との意見交換やコンファレンス・学会参加および発表等を行い、日本以外の動向についても考察の範囲を広げる。さらに、ストリートビューがこれから導入されるであろう地域の動向についても調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度研究費残高は、次年度のアンケートのデータ分析の経費に充てられる予定である。データ分析は、申請時研究計画ではなかった項目である。この分析に当たり、補助要員を雇用することを考えている。また、アンケートに関して追加的な調査を行う際の経費にも充当する。
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