2012 Fiscal Year Research-status Report
グローバル時代のインドネシアとフィリピンにおける地方分権と地域間格差の分析
Project/Area Number |
24530274
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (50175791)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市・農村間消費格差 / 教育格差 / 地域間格差 / 都市化 / インドネシア |
Research Abstract |
24年度は、2008-2010年度の社会経済家計調査によるパネル・データ(サンプル・サイズ:60,947)を用いて、インドネシアにおける家計消費支出格差要因が農村と都市でどのように異なるかをさまざまな要因分解手法を用いて分析した。Theil尺度によると、総格差のほぼ85%は農村内あるいは都市内における格差により説明できることが分かった。また、都市化の進展と都市内格差の上昇により、都市内格差の比重が高まっていることも分かった。しかし、Elbers, et al. (2008)が提唱しているグループ間格差の新しい指標によると、都市・農村間格差の貢献度は、通常の指標と比べて、10パーセント・ポイントほど増加する。すなわち、都市・農村間格差は総格差の重要な要因であることが分かった。Blinder (1973)とOaxaca (1973)が開発した要因分析手法よると、都市・農村間格差としては都市・農村間の平均的な教育レベルの違いによるものが大きく、全体の都市・農村間格差の約35%を説明している。また、都市内格差についても教育の役割は大きく、家計主の教育レベルによる格差は、新指標によると、総都市内格差の約30%を説明している。一方、地域間(スマトラ・ジャワ・カリマンタン・スラウェシ・その他地域間)格差の総格差に対する貢献度は新指標で計測しても約1-2%であり、地域間格差の比重は極めて低い。24年度は、2008年度の消費モジュール社会経済家計調査データ(サンプル・サイズ:282,387)を用いた都市・農村間家計消費格差の分析も行った。その成果は、Letters in Spatial and Resource Sciencesに掲載される予定である。また、本科学研究費プロジェクトとは直接は関係ないが、バングラデッシュにおける家計所得消費データを用いて家計所得格差と貧困の地域分析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、インドネシアとフィリピンにおける地方分権化政策と地域間あるいは都市・農村間格差の分析の第1段階として、特にインドネシアに焦点を当て、社会経済家計調査データにより地方分権化政策導入以降における家計消費支出格差の要因分析を地域間あるいは都市・農村間格差という観点から行った。インドネシアの地方分権化政策は2001年に実施されたため、その地域間格差あるいは都市・農村間格差に対する影響を分析するためには、1990年代から2000年代までの長期間の社会経済家計調査データと地域所得データ(州別・地区別データ)が必要になる。24年度では、インドネシア統計局から、1996年度から2011年度までの毎年の社会経済家計調査(core Susenas)データを取得した。一方、地域所得データに関しては、州別産業別データについては、1983年から2004年までのデータはすでに購入済みであり、今後2005年以降のデータを購入する予定である。また、地区別地域所得データに関しては、2004-2009年のデータは取得済みであり、地方分権化政策の影響分析のための2003年以前のデータを購入する予定である。それに対して、フィリピンに関しては、1975年から2009年までの地域別・産業別地域所得データ(16地域・11産業別)を国家経済開発局(NEDA)から購入したところである。また、家計調査データについては、1997、2000、2006年度のデータを取得済みであり、2009年度のデータを今後購入する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、平成24年度に構築したデータ・ベースを用いて、研究目的に沿った分析を行う。また、収集した地方分権化政策に関する資料と学術的な文献により、インドネシアとフィリピンにおける地方分権化政策の過去20 年間の変遷を概観し論文としてまとめる予定である。具体的には、フィリピンに関しては、平成24年度に取得した1975年から2009年までの地域別・産業別地域所得データ(16地域・11産業別)を用いて、Akita and Miyata (2010)が開発した人口シェア重み付変動係数によるbi-dimensional decomposition method により、フィリピンの産業構造変化と地域間所得格差の長期的な分析を行い、1991年の地方分権化政策導入が地域間所得格差にどのような影響を及ぼしているかを分析する。また、インドネシアに関しても同様な手法を用いて、2004年以降の産業構造変化と地域所得格差の分析を行う。ここでは、2011年のAsian Economic Journal誌で発表した1983年から2004年の分析結果と比較し、地方分権化政策の影響に関する長期的な分析を行う。インドネシアについては、平成24年度に取得した1996年度から2011年度までの毎年の社会経済家計調査(core Susenas)データを用いて、都市化(および教育拡充)と家計消費支出格差変化に関するKuznets仮説の検証も行う予定である。また、研究成果は、随時国際的な学会(2013 Pacific Conference of Regional Science International (PRSCO) in Bandung, July 2-4など)で発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、資料・データ収集のための国内外の出張と研究成果発表のための学会出席が研究費支出の中で大きな比重を占めている。また、引き続きインドネシアとフィリピンにおける社会経済家計調査データと地域所得データの収集も行う予定であり、データ購入のための予算も計上する。具体的には、インドネシアに関しては、2011年度の消費モジュール家計調査データ、2000年代毎年の労働調査データ(Sakernas)、地域間産業連関表などを、一方、フィリピンについては、2009年度家計所得消費調査データ(FIES)の購入を予定している。国内外の出張については、7月2日から4日までインドネシアのバンドンで開催される2013 Pacific Conference of Regional Science International (PRSCO)と10月12日から14日まで徳島大学で開催される日本地域学会2013年年次大会に出席し、研究成果を発表する予定である。また、新バージョンの統計処理ソフトと空間計量分析ソフトの購入も考えている。それと同時に、大規模データ処理と新バージョンの統計処理ソフトのための高性能なパーソナル・コンピュータの購入も予定している。
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Research Products
(4 results)