2013 Fiscal Year Research-status Report
配偶者控除・社会保障制度が日本の女性労働に及ぼす影響の構造推定
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24530275
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
高橋 新吾 国際大学, 国際関係学研究科, 准教授 (70445899)
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Keywords | 配偶者控除 / 構造推定 |
Research Abstract |
日本の既婚女性の年収分布をみると、100万円付近に分布の著しいクラスターがみられる。日本の配偶者控除制度は、配偶者の収入が103万円を超えると減らされるため、配偶者控除がこのクラスターの主な原因であると一般的に考えられており、一般的にこのクラスターは103万円の壁と呼ばれている。本年は、配偶者控除制度及び所得税がもたらす非線形予算制約線を明示的に取り入れた労働供給曲線の構造推定を行い、その結果を用いて配偶者控除制度が変更された場合、どの程度女性の労働供給が変化するかを測定した。その結果、配偶者控除を廃止すると、廃止によって、もっとも影響を受ける収入70万円から103万円の区間にいる女性に限って言えば、労働供給が4%ほど上昇する可能性があることがわかった。しかしながら4%の労働供給の上昇は、年間労働時間に換算すれば50時間ほどの上昇に過ぎず、103万円の原因というには影響が小さすぎることがわかった。本論文は本年度、学術誌に投稿された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、構造推定を行い、その結果をまとめた論文を学術誌に投稿することを目標とした。推定が終わり、論文が投稿されたので、概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2004年の配偶者特別控除上乗せ部分廃止が女性労働に与えた影響を推定した論文を改定し、学術誌投稿することを目標とする。2004年以前に103万円以上であった人をコントロールグループとしてこの影響を推定しているが、推定結果がモデルスペシフィケーションに対してセンシティブであるため、論文投稿に至っていなかった。つまり、最もシンプルな差分の差分法を使って推定すると、上乗せ部分廃止の効果は10%ほどの労働時間の上昇であるという結果がでる。個人固定効果を入れてもこの効果は残る。しかしながら、これに労働経験年数を入れると、効果が全く消える。しかし、なぜ、経験年齢がこれほどまでに結果に大きく作用するかを説明するのかがまだうまく説明できていない。この問題をクリアにし、論文投稿にもっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Western Economic Associationのコンファレンスに参加する予定であったが、これをキャンセルしたため、差額が発生した。 本年度は、American Economic AssociationもしくはWestern Economic Associationのコンファレンスに参加を予定しており、これに予算を割く。
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