2012 Fiscal Year Research-status Report
災害・異常気象の頻度・不確実性の増大に対応する順応的管理・対策の経済分析
Project/Area Number |
24530276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
小谷 浩示 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (80422583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿中 真 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (40421234)
馬奈木 俊介 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70372456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気候変動 / 異常気象 / 災害 / 頻度上昇 / 資源 / 農業 / 対策 / 経済分析 |
Research Abstract |
近年、気候変動により災害と異常気象の頻度上昇が増大したと言われている。本研究は、そうした変化に対し、農業や資源等に焦点を当てつつ、どのような対策を順応的にとっていくべきか、を分析し明らかにしていく。その第一段階として平成24年度では実際にそうした事が実際に起こっているのか、そして起こっているのならば人々がどのような認識を持ち、なんらかの対応をとっているのかを分析する事に注力した。特に、そうした気候変動による影響がより顕著である地域を選定し、日毎の気候データ、特に気温と降雨量を収集した。また同時にその選定地域に居住する人々に対して家計調査を行い、各家計の教育レベル、収入、家族構成、職業等を含む社会経済的なデータ、そして彼らの気候変動に対する認知について様々な側面から質問をして定性的なデータも収集した。その認知に関する定性的なデータというのは例えば「この地域において降雨量がここ25年間に上昇・減少しているか、もしくは変化していないか」という様な質問をし、それに対する答えを統計的に処理しているデータである。こうしたデータを収集する事で、統計学的に人々がどれだけ気候の変化に対して正しい認識を持っているのかを明らかに出来る。こうした気候データの収集と家計調査は、今までの所、ネパールとバングラディッシュで既に実施されている。特にバングラディッシュのデータに関しては統計的な分析も終了しており、既に論文として国際学術誌に投稿済みである。また、今年度もこうした気候データと家計調査を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画に基づき、ほぼ予定していた研究工程を順を追って完了出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、気候変動とそれに対する人々の認知だけでなく、更に気候変動に付随する災害や異常気象に関する考察を更に進める予定である。特に、認知を正しく保持している人とそうでない人とでは、気候変動とそれに付随している災害と異常気象に対する対応策に差が存在するのか、またそうした対応策を講じる上でどこまで協力的であるのか、等の課題を明らかにしていく予定である。そうする事で、経済学的な視点から更に一歩進んだ形で、異常気象と災害に関する対応策について分析を深めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
天災・異常気象に対して専門知識と幅広い経験を持つexpertとそうした知識と経験は持たないものの対象となる天災・異常気象を被害者として経験したnon-expertを被験者とし、Expertとnon-expertの各々に対しサーベイを行う(小谷・馬奈木、研究助手の雇用とその謝金)。このサーベイの目的は二つある。一つは、expertとnon-expertの両被験者に対し、実際にある特定事例の天災・異常気象がどの程度の頻度で起こっていると認知しているのか、そしてそれらが現実のデータとどこまで整合性があるか解析を行うことである。こうすることでexpertとnon-expertが正しい認知に基づいて天災や異常気象に対し対策や被害をどう考えていのか、が明らかとなり、最適な対策を考える際の重要な情報として利用できる。もう一つめの目的は、貨幣価値や経済価値に変換する事が難しいとされる資源環境・心理的損害をこのサーベイを通して突き止めることである。この際の留意点は、経済学では一般的に資源環境・心理的損害を家計調査・サーベイで突き止める事は非常に困難とされていることを、我々は直接被害を経験しているnon-expertと専門家であるexpertを被験者とする事で解決しようとしている点である。現時点において幾つかの事例を分析対象として選定している所である。現在、バングラディッシュで数年おきに洪水の被害を被っている地域や今回日本で起きた東日本大震災、特に福島の原発問題を分析事例候補として考えている。選定の条件として、被験者が災害や異常気象による被害を被ってからあまり日が経っておらず、資源環境面を含む総合的被害と心理的負担を率直に表現出来る状態が必要である。
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Research Products
(2 results)