2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530277
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
太田代 幸雄 南山大学, 経済学部, 准教授 (30313969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 明彦 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10322992)
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Keywords | 動学的国際貿易理論 / 内生的出生率 / 国際貿易パターン / 比較優位 / 貿易の利益 / 国際貿易利益 |
Research Abstract |
これまでの国際貿易理論では,国際貿易パターンに影響を及ぼす要因は,静学理論(ヘクシャー=オリーン・モデル等)においては固定された生産要素賦存比率によって決定されると考えられてきた。また,動学理論においても,人々の投資活動を通じて経済における 資本設備が変化することにより生産要素比率が変化するという側面は解明されてきたが,依然として人口・労働力の変化に関する側面は十分に分析されてこなかったのが実情である。本研究課題の2年目ということになるが,1年目に引き続き既存の国際貿易理論の流れを整理し,新たな理論構築に向けて,どのような要因が重要であるかを提示し,本研究課題の理論が,現実に対してどれだけの説明力を持っているかについても,併せて検討を続けた。さらに,具体的なモデル展開を行いその是非についても検討を行った。 平成24年度にモデル構築した論文“Fertility, Mortality, and International Trade Pattern within a Heckscher-Ohlin Framework”では,内生的な出生率/死亡率が活動に影響を及ぼすような構造を持つ2国経済を仮定して,子育てに伴い発生する養育費用や経済発展に伴い変動する死亡率が長期的にこの経済にどのような影響を及ぼすかを分析できるような動学的国際貿易モデルを定式化した。具体的な分析内容としては,長期均衡の存在・一意性・安定性に関する分析を行った後,両国における出生率/死亡率が貿易パターン等にどのような影響を与えるかについて検証した。この論文は,昨年度に引き続き,学会発表を行いながら,現在学術論文雑誌への投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は,内生的な出生率の存在する経済における「貿易の利益」という,国際貿易理論における重要な命題について考察することが目的であった。研究分担者と共に,詳細な打ち合わせを行い,新たな理論構築に向けて,どのような要因が重要であるかを検討した。一般的には,少子高齢化の発生は,経済が成熟し技術進歩などにより高齢化が生じるとともに,何らかの理由,例えば養育費の上昇などにより少子化も発生するというメカニズムにより説明されるが,このメカニズムが経済厚生を高めるか否かについては,また別の問題であるといえる。この厚生分析という新たな視点で問題を考察するというのが平成25年度における最も重要な試みであったため,人口構造・国際貿易パターン・経済厚生との関連性を分析した。 さらに,考察対象になっていなかった経済における人口構造,あるいはその変化と社会的な生産・国際貿易パターンを結びつけるという意味で,近年構築した経済における出生率の内生化を導入したモデルKarasawa-Ohtashiro and Yanase (2011)に加えて,死亡率も内生化したモデルを構築し,昨年度に引き続き検討を加えた。 上記の内容から,当初の目的をほぼ遂行できたと考えているため,以後,モデルの完成度をより高め,海外の研究論文雑誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,国際的な完全競争市場においてある国が貿易政策を実施することにより,各貿易国にどのように影響するかについてまで考察範囲を拡げる。貿易政策としては,通常,輸入関税政策や非関税障壁,また生産補助金の供与などが考えられるが,今回の研究では,例えば政府の子供の養育費用に対する補助金政策(子ども手当)というように一見国際貿易政策とは考えられない政策が国際貿易パターンの変化をもたらし,厚生水準に影響するようなケースを考察することも可能となる。 平成27年度は,それまでの完全競争市場という設定から,不完全競争市場へとモデルを拡張し,貿易の利益・貿易政策の効果についても併せて検討する。
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Research Products
(1 results)