2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530282
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
新熊 隆嘉 関西大学, 経済学部, 教授 (80312099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅田 一 関西大学, 経済学部, 教授 (90330167)
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Keywords | 非対称情報 / セカンドベスト / 環境政策 / 試行錯誤 / 間接表明メカニズム |
Research Abstract |
平成25年度は、既存研究が設定してきた非対称情報の構造をさらに一般化して、それでもファーストベスト結果を得ることができる仕組みを間接表明メカニズムの中で見つけることに取り組み、そしてそれに成功した。具体的には、それは以下のような試行錯誤過程によって特徴づけられる。まず、汚染削減関数の2つのパラメータを各企業が私的情報として保持しており、政府にはそれがわからない状況を仮定した。そのもとで、政府は第1期と2期に汚染排出税を任意の税率に設定する。そのときの実際の排出量を観察することで私的情報である2つのパラメータを予測することができ、第3期にはファーストベストな排出税率を推定することができる。ところが、各企業は第3期に設定される排出税率を意図的に引き下げようと戦略的に第1期と2期の排出量を選択する。ファーストベストを達成するためには、企業が税率引き下げインセンティブを持たないようなメカニズムが新たに必要である。これは、第3期に排出基準を各企業に対して設定し、その基準と第3期の排出量との差に対して罰金を課すことによって可能である。この罰金関数の設定がキーである。この罰金関数を見つけることは一般には容易ではないが、第3期の排出量基準と税率をうまく選ぶことでそれが可能になる。第3期の排出量基準と税率は、それが限界削減便益曲線上の点となるように設定されており、ワイツマン以降のPrice versus Quantityの伝統的な議論に沿えば、本研究で提示されたメカニズムはPrice(第3期の税率)とQuantity(第3期の排出量基準)の同時制御と表現することができる。これによって、これまで既存研究で探求されてきたセカンドベストではなく、最も望ましいファーストベストを第3期以降において実現することができることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、既存研究が設定してきた非対称情報の構造をさらに一般化して、それでもファーストベスト結果を得ることができる仕組みを間接表明メカニズムの中で見つけることに取り組み、実際にそれが出来たためである。 具体的には、まず、汚染削減関数の2つのパラメータを各企業が私的情報として保持しており、政府にはそれがわからない状況を仮定した。政府は第1期と2期に汚染排出税を任意の税率に設定し、実際の排出量を観察することで私的情報である2つのパラメータを予測することができる。その結果、第3期にはファーストベストな排出税率を推定することができることを示した。 この成果は、既存研究よりも情報の少ない状況下でも、これまで既存研究で探求されてきたセカンドベストではなく、最も望ましいファーストベストを第3期以降において実現することができることを示しており、画期的なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のテーマとして、平成25年度に得られた研究成果を次の二つの保険に関する問題に応用することを計画している。一つは、地球温暖化において国際的合意を得る仕組みの考案である。地球温暖化交渉においては拘束力のある国際的合意を得ることが困難である。そこで、地球温暖化のリスクを緩和させる(被害補償を目的とした)保険の仕組みを導入すれば、各国が協調できる可能性が広がるのではないかと考えている。そして、平成25年度に得られた研究成果を保険の仕組みに応用することに取り組みたいと考えている。 もう一つは、災害保険の最適なデザインを考えることである。一般に被災規模は災害が起こる前の個々人の行動(準備)に依存する。一般にこの行動は保険会社によって観察することができない非対称情報であるが、保険会社は実際に観察される被災規模から人々の行動を推測することで、ファーストベストな保険を設計することができるかもしれない。この可能性を探っていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)は2,243円と微小である。研究代表者が平成25年の9月より一年間の予定でカナダに在外研究に出向いたため、文具購入等を控えた。 平成26年度においても、直接経費は物品、旅費、謝金に使用される(内訳:物品10万円、旅費80万円、謝金10万円)。このうち、旅費に占める割合が多いが、それはThe World Congress for Environmental and Resource Economistsにおいて論文を発表するためである。物品としては、インク等おもに文具の購入を考えている。なお、上記の前年度からの繰り越し金も物品の調達に使用される予定である。謝金は、英語論文のネイティブチェックに使用する予定である。
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