2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530283
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
熊谷 成将 近畿大学, 経済学部, 教授 (80330679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 家族介護者 / メンタルヘルス / 中高年者 / パネルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の研究では、家族介護による介護者の精神面の健康悪化に比べて、介護者の身体面の健康悪化に対して、あまり注意が払われていない。精神面の悪い健康状態が身体面の健康を悪化させるという経路が十分に考慮されないまま、これまで、家族介護者の負担、精神的健康状態と身体的健康状態の間における因果関係が議論されてきた。私は、介護時間と家族介護者の健康状態を表す変数(精神的健康状態: K6, 身体的健康状態: 日常生活の活動に困難有り)を関連づけて、介護者の身体的健康と精神的健康の複雑な相互関係を分析し、その結果をKumagai(2014a’)で発表した。 厚生労働省の「中高年者縦断調査」のパネルデータ(2005-2009年)を用いた回帰分析の結果、Kumagai(2014a’)において、有業の介護者に対して次の4点を明らかにすることができた。①前年の介護時間が週20時間以上のとき、今年の介護時間は前年よりも短かった。②日常生活の活動に困難が有った女性介護者は精神的健康状態を悪化させた。これは、前年の精神的健康状態が悪いことが、今年の日常生活の活動を困難にする、という逆向きの因果関係を考慮した分析結果である。③心臓病を有する男性介護者は、精神的健康が悪い傾向があった。④同居して介護することは、男女ともに、介護者の精神的健康を悪化させる要因ではなかった。 Kumagai(2014a’)の改訂版であるKumagai(2015)において上記の②が頑健な推定結果であることを確認し、女性介護者が日常生活の活動に困難有りとならないようにするために、公的介護サービスの利用が重要であることを指摘した。 Kumagai, N. 2015. Gender Differences in the Impact of Family Caregiving on Caregivers’ Mental Health.
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