2012 Fiscal Year Research-status Report
市場融合環境におけるインフラ施設の整備・共同利用に対する公的介入と競争の研究
Project/Area Number |
24530285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
水野 敬三 関西学院大学, 商学部, 教授 (40229703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (80334879)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 接続・託送料金 / インフラ整備 / 参入阻止 |
Research Abstract |
本研究課題のもと、本年度は特に「公的介入がインフラ施設の整備と共同利用に与える影響」の分析を理論モデルの構築によって研究を進めた。理論モデルでは、まず接続・託送供給制度下での自由競争の結果をベンチマークとして考察した。ベンチマークとなる公的介入のない自由競争のもとでは、接続によるスピルオーバーの程度とインフラ投資費用の大きさによって3種類の均衡が存在することがわかった。具体的には、スピルオーバーが小さく、インフラ投資費用が小さい場合にはサービスベース企業を排除する「排除均衡」、スピルオーバーが大きく、インフラ投資費用が大きい場合には接続料金が接続費用と同値になり、参入が促進される「接続競争均衡」、スピルオーバーの程度とインフラ投資費用の大きさに関わらず、すべてのパラメーターの領域である一つのインフラベース企業だけが接続料金を接続料金よりも高めに設定して接続を許可する「非対称接続均衡」の3つが存在する。 この自由競争ベンチマークに公的介入を導入してみる。分析では、2種類の公的介入の状況を想定した。第1の公的介入状況はRR規制レジームと呼ばれ、既存事業者に接続・託送供給義務のみならず、接続料金にも規制が課されている状況である。第2の状況はRN規制レジームと呼ばれ、既存事業者に接続・託送供給義務のみ課されている状況である。 RR規制レジームでは排除均衡は存在しない。またスピルオーバーが大きく、インフラ投資費用も大きいときにはRR規制レジームのほうがインフラ整備は進展する一方、スピルオーバーが小さく、インフラ投資費用が小さいときには自由競争における「排除均衡」のほうがインフラ整備は進展することがわかった。RN規制レジームと自由競争を比較すると、RN規制レジームのほうがインフラ整備が進展することもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は[C]「市場構造に対する公的介入がインフラ整備と共同利用に与える影響」について理論研究を行った。研究成果は2本の研究論文にまとめられており、1本は既に審査制学術雑誌に投稿済みである。もう1本の研究論文における比較分析は幾分中途半端であるが、一応の分析結果を得ることができている。その分析結果の一部を都市エネルギー協会の「ガス事業研究会報告書」に掲載した。すべての分析結果を網羅的にまとめ、その直感的解釈をよりわかりやすく表現したものをもう1本の研究論文として5月中にまとめる予定である。それを国内大学のセミナー、研究会等で報告する。 当初、平成24年度には[A]「財政面の資金制約のもとでのインフラ整備と資金調達問題」にも着手する予定であったが、これに着手することはできなかった。しかし、課題[C]の均衡分析結果は国際的にも面白い重要な結果と考えているため、この研究論文をいち早くまとめることを第1の目標としたい。課題[A]については、平成25年度に既存関連研究の整理から順を追って進めていく予定である。既に2本の既存研究論文には目を通し済みであり、そこから研究の拡張方向についてのヒントは得ている。 以上の研究進展状況から見る限り、当初の目的の達成度は70%程度と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、上記の課題[A]と課題[B]「双方向接続と一方向接続の融合環境におけるインフラ混雑問題」をの理論研究に着手する。特に課題[A]についてはいち早く着手する予定である。この課題研究プロジェクトには兵庫県立大学の三上和彦教授との共同研究になる可能性が高い。研究代表者である水野は過去に三上教授と共同研究を行った実績があり、今回この研究課題について相談したところ、共同論文に対する意見交換に協力してくれる旨の同意を得ている。よって課題[A]には三上氏の協力を得る予定である。研究分担者である松島氏とは月2回の定期研究会合を持ち、各研究者の途中成果を報告・検討する形式で理論研究を進めていく。特に課題[B]に関する共同研究、また課題[A]の2本の共同論文の審査制学術雑誌への掲載を目指して平成25年度も定期的共同研究会合を持つ。 7月下旬から課題[C]の2本の研究論文の成果発表を行っていく。9月上旬のEARIE年次大会に出席し、課題[C]の研究を報告するが、同時に課題[A][B]に関連する研究の動向についての資料収集も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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