2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530296
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
徳井 丞次 信州大学, 経済学部, 教授 (90192658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 一泰 東洋大学, 経済学部, 教授 (40338752)
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Keywords | 自然災害 / サプライチェーン / 地域間資源配分 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの目的は、東日本大震災の直後に生じたサプライチェーン途絶効果の大きさとその波及を分析し、自然災害に備えるための政策的教訓を得ることである。前年度の研究では、被災地の産業別の直接被害状況を推計し、その推計結果と地域間産業連関表を使ってサプライチェーン途絶効果によって生じた間接被害の大きさとその波及状況を推計し、サプライチェーン供給元の分散による間接被害軽減効果を予測した。本年度の研究では、自然災害による被災が、その後の復興プロセスを通じて資源配分の歪みに与える影響に着目し、申請者も参加して構築した都道府県別産業生産性データベース(1970年-2008年)を使って、都道府県別産業別に資源配分の歪み(生産要素の限界生産性の乖離)によって生じている生産性低下を計算した。その結果を使って、1995年に発生した阪神淡路大震災後の兵庫県の資源配分の歪み度に着目した分析を行った。その結果、復興プロセスでの資本形成による労働生産性への寄与はみられるものの、産業間の資源配分からの寄与は小さく、資源配分の歪みを是正する効果は生じなかったとの結論が得られた。この結果は、現在進行中の東日本大震災からの復興プロセスにも教訓として生かすべきである。なお、この研究結果は、2014年3月17日に行われたWorkshop on Economic Recovery from the Great East-Japan Earthquakeで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究で利用した「都道府県別産業生産性データベース」の構築には、2年前から取り掛かっていたものであったが、予想以上に時間がかかった。そのため、このデータを利用した分析を開始するには遅れたが、3月の国際ワークショップで発表することが事前に決まっていたので、それに間に合わせるように進捗を急いだ。
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Strategy for Future Research Activity |
既に行ったサプライチェーン途絶効果の分析を補完する研究として、サプライチェーンの復旧に着目した分析を行う。これは、サプライチェーンを通じた他地域との繋がりが、我々が行った分析のように災害直後の間接被害の波及を拡大する一方で、その後の復旧プロセスをむしろ加速するのではないかという観点で、戸堂・中島・Matous(2014)が指摘している。彼らは、この点を申請者らの分析の限界と指摘したうえで、独自に実施した企業アンケートの基づくデータを使って分析している。そこで、こうした批判を踏まえて、我々は地域間産業連関表を使って別の角度からサプライチェーン復旧の分析を行いたい。具体的には、地域間産業連関表を使えば地域別・産業別に産業の前方連関、後方連関の度合いを計測することが可能であるので、その結果と復旧状況を比較することによって分析が可能であると考えている。この分析と過去2年間の分析結果を加えて研究成果にまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究予算で、東日本大震災の被災地への出張も行い、日本開発銀行東北支店東北復興支援室と石巻日々新聞で復興状況のヒアリングを行い、復興プロセスを視野に入れた分析の着眼点のヒントを得ることができた。その一方で、「都道府県別産業生産性データベース」を利用した分析に着手できるのが遅れたため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は、6月に米国で行われる国際ワークショップでの発表を招待されており、その発表に向けた準備にすでに取り掛かっていおり、研究分担者と緊密に打ち合わせを行いながら、電力中央研究所から入手した都道府県別の産業連関表を使って新しい分析に取り掛かっており、前年度に生じた次年度繰越分を含めて26年度分の研究予算を年度内に計画通り適切に執行する見通しである。
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Research Products
(4 results)