2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
大坂 仁 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90315044)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 東アジア / 収斂 / 生産要素移動 / 時系列分析 |
Research Abstract |
本年度の研究では、東アジア経済における収斂について先行研究レビューを行い、またパネル単位根検定などを用いて実証分析を行った。1960年以降の1人あたりGDPを所得レベルの擬似変数として東アジア地域の収斂過程を検証すると、急速な経済成長を遂げている中国や経済低迷の時期が続いたフィリピンを除く東アジア諸国では所得レベルにおける収斂がみられた。特に2つのサブ・グループ、すなわち日本とアジア新興工業経済国(NICS、台湾を除く)、および東南アジア3国(インドネシア、マレーシア、タイ)においてより明確に収斂が観測され、またその要因として産業別にみる就業構造変化の影響がみられた。 なお、生産要素移動に関連して中国の労働移動の問題にも焦点をあてて実証分析を試みた。中国の労働移動については2002年に中国社会科学院が行った世帯所得調査プロジェクトの調査データを用いてプロビット・モデル分析を行った。分析の結果、農村部から都市部への労働移動の発生確率を高める属性として労働者の年齢が相対的に若く、かつ教育水準が低いことが挙げられた。教育レベルが上がれば、実質賃金ならびに期待賃金は相対的に上昇すると考えられるため、本研究での推定結果は賃金の低い労働者が移動しうる属性を明らかにしているといえる。年齢が低いものほど労働移動しやすいとの結果も同様な理由に基づくといえる。なお、少数民族であるかどうかに関しては地域別に推定結果が異なっており、東部沿岸地域および中央内陸地域ではプラスとなっている一方で西部地域ではマイナスとなっていることは興味深い。最後に、世帯主別データや地域性なども考慮した本研究はKnight-Deng-Li (2011)などの先行研究を補足するものである。今後の課題として、労働移動の問題を継続して分析するとともに、資本など他の生産要素の移動に関する分析も行うことが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は本研究課題の初年度として、特に次の2つの項目について研究を行った。 1.東アジア経済における収斂過程および生産要素移動に関する文献・先行研究レビュー 2.東アジア経済における収斂過程の実態と収斂理論の検証 これらの中で、東アジア経済における収斂過程および生産要素移動に関する文献・先行研究レビュー、ならびに収斂過程の実態にかかる実証分析はおよそ当初の計画通りに進めることができた。ただし、生産要素の中では労働に関する分析が多く、資本に関する分析は行うことができなかったため、その点に関しては次年度の研究課題として残されることになった。しかしながら、全般的に研究の進捗状況は良好であり、大きな問題点もなかったことから自己点検の評価区分を上記のとおり(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は前年度に引き続き、東アジアにおける収斂過程の実態や現状分析を行い、また収斂理論を検証していく。平成25年度の具体的な分析項目は次の2つである。 1.東アジア経済における収斂過程の実態と収斂理論の検証(前年度の継続) 2.東アジア経済の収斂の要因分析 これらの項目を具体的に分析していくにあたり、前年度に引き続き関連データの収集を行い、また先行研究などの文献レビューを行っていく。なお、収斂の要因分析については関連するマクロ経済データのみならず、教育・保健衛生などの社会統計データも用いて、計量的にデータ分析を行い関連性や特徴を明らかにしていく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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