2013 Fiscal Year Research-status Report
データリッチ型ニューケインジアンモデルの開発と金融財政政策への応用
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24530307
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
飯星 博邦 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90381441)
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Keywords | 経済政策 / マクロ計量経済モデル / レジームスイッチ型DSGEモデル / ゼロ金利制約下での金融政策 / DPによる政策シミュレーション |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績としては、ゼロ金利制約下でのレジームスイッチ型金融政策の経済的効果・影響 (景気やインフレ)について、数値解析法を使い、標準的ニューケインジアンモデルの観点からシミュレーションを行った。この研究の社会的な意義は、現在の世界経済が抱えている問題について真正面から考察した点である。つまり、2008年のリーマンショック以降、現在にいたるまで、日本および欧米先進国は短期の政策金利はゼロ金利に陥っており、金利は0%から動かすことができず金融政策は有効に機能していない。さらに、中央銀行の総裁の交代時に散見される「金融政策のレジームスイッチ」(受動的(passive)金融政策と積極的(active)金融政策の間をスイッチ)がこれに加わったケースを今回の研究で考察した。この研究についてはモデルが複雑になり、その結果、数値計算が煩雑になるために、今まで誰も考察してこなかった。 研究結果が示すところは、ゼロ金利下では、受動的(passive)金融政策と積極的(active)金融政策の間をスイッチは経済効果としては大きな寄与はもたらさず、経済効果に大きく貢献するのは国民の抱く将来の期待(不確実性)であることがシミュレーションから示された。つまり、ゼロ金利下での有効な金融政策は、国民の将来に対する不確実性を払しょくし、将来に対するボラティリティを引き下げるフォワード・ガイダンス政策であろうことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般にDSGEモデルは線形であり、この場合、数値計算は容易である。しかしながら、ゼロ金利制約の下でのDSGEモデルを扱う場合、非線形となり、この場合のマクロ内生変数の期待値の計算は格段に難しくなる。それは計算手法の難易度だけでなく、PCによる計算時間の長時間化も含まれる。以上の2つの難易度が研究の遅延を招いている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度、25年度の2年間にわたり、DSGEモデルについて、データリッチ化およびモデルの非線形化という多角的な視点から最新手法の研究・調査を進めてきたので、最終年にあたる26年度は、これらの研究を統合し、その応用としてマクロ計量経済モデルを利用した最良の予測手法についての研究・調査を敢行したい。 具体的には、Geweke and Amisano(2011,2012), Waggoner and Zha (2012), Del Negro, Hasegawa, Schorfheide (2013)に基づいて、各マクロモデル予測分布をプールして、この分布の線形結合(モデルアベレージ)に関する、より効率的な手法の開発に着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に予定していた学会参加のための旅費は、来年度の国際学会参加のための旅費へ持ち越すこととする。 次年度の研究計画に基づき、研究費は、国内および国際学会への参加のための旅費、数値計算ソフト、図書購入費に充当する予定である。
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