2014 Fiscal Year Research-status Report
低成長期の日本における賃金率の産業間格差と構造変化
Project/Area Number |
24530309
|
Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
原田 裕治 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (70313971)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際比較 / 資本主義の多様性 / 制度変化 / マルチレベル分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代以降の日本経済は,経済成長の停滞に加えて,生産性変化率や賃金率にかんする産業間あるいは企業間の格差拡大,またそれを反映した経済構造の変化が確認される。制度面で見ても,金融市場,労働市場,製品市場など各種領域において規制緩和が進んだ。これらの変化を反映する形で,各種マクロ経済指標にも変化が見られる。マクロレベルの労働分配率変化はそうした変化が見られる代表的な指標の1つである。 しかし一方で,経済構造の変化,制度変化,そしてマクロ経済変数の変化は,日本以外の国でも確認される。このことに着目して2014年度は,国際比較分析を中心に行った。具体的には,1980年代から2000年代の先進資本主義諸国,約20カ国を対象とした統計分析および計量分析を行った。行った分析の特徴は2つである。第1に,単に複数の国を対象としただけでなく,近年盛んに議論されている「資本主義の多様性」の議論を継承して,対象国をグループ化して,グループ間の違いとグループ内の類似性について検討した。第2に,産業動態よりも各種領域における制度の変化に着目して,それら制度変化とマクロレベルの労働分配率の変化がどのような関係を持つかについて分析を行った。 このような分析を行うために,各国のグループ化を行うための他変量解析に加えて,計量経済学的手法の1つであるマルチレベル分析を新たに導入した。この手法を利用して,各種制度変化が労働分配率に与える影響が,各国グループごとにどのように異なるかについて分析を行った。 研究成果の一部は,進化経済学会第19回大会で報告した他,日仏経済学会の学会誌でも発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新しい分析手法を修得するのに時間を要したため,実際の分析を行うのが遅れてしまった。 また当初予定していなかった学内業務が急激に増えてしまったため,十分な時間を研究に充てることができない期間があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記研究をもう少し精緻化して完成させた上で,今年度中に海外の学術雑誌に投稿する予定である。また現在は,産業動態のテーマから離れているため,データを集めて類似の手法(マルチレベル分析を用いた国際比較分析)を適用して分析を行う予定である。 さらに,当初取り組んでいた日本経済固有の産業分析は,十分な分析成果を挙げることができず中断しているため,同じくマルチレベル分析の手法を利用して再度検討し直す。できれば,この研究についても今年度中に結果を出して学術雑誌に投稿することを目指したい。
|
Causes of Carryover |
当初研究論文を完成させて,海外学術雑誌への投稿を予定していたが,分析に遅れが生じてしまったため,英文校正費などへの支出ができなかった。 また,同僚が突然病気休業となった影響もあり,学内業務の量が急激に増えて研究が思うように進められず,海外出張などの予定を変更せざるを得なかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在進めている研究の分析を終わらせて,英文校正に出す際の費用に充てる他,秋に関連する学会の国際シンポジウムが開かれる予定のため,それに参加・報告するための費用に充てる予定である。
|
Research Products
(6 results)