2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530311
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Research Institution | Asahikawa University |
Principal Investigator |
大野 成樹 旭川大学, 経済学部, 教授 (50333589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原油価格 / 株価 / 為替レート / 因果性 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、ロシアにおける1997年後半から2012年末の原油価格、株価、為替レートの相互関係を分析することに充てられた。分析に際しては、多変量自己回帰(VAR)モデルを利用し、因果関係の検出に際してはToda and Yamamoto (1995) の手法を活用した。また、分析期間は、ロシア通貨危機前、通貨危機後、経済回復期、原油高騰期、世界金融危機、世界金融危機後、経済安定期の7つの期間に分割した。 分析結果は以下の通りである。第1期は為替レートから株価への因果性が見られた。ルーブルが減価する下で資金が外国へ流出することを反映していると考えられる。この因果性は、アジア通貨危機における東南アジア諸国でも観察されており、ロシアにも当てはまることが明らかになった。第2期は為替レートから株価への因果性の他に、原油価格から株価への因果性が見られた。原油価格の上昇が産油国ロシアの株価を上昇させたことを反映していると考えられる。第3期は株価から原油価格への因果性が見られた。この時期のロシアの株価は世界の株価との相関性が極めて高く、米国のITバブル崩壊後の世界経済の低迷が原油価格の下落を引き起こしたことを示していると考えられる。第4期には原油価格から為替レートへの因果性が見られた。原油高騰がロシアのルーブル高を招いたことを示している。第5期には株価から為替レート、原油価格から為替レート、為替レートから原油価格への因果性が見られた。世界経済危機の影響で株式を売却して外国へ持ち出す動きなども反映していると考えられる。第6期および第7期には原油価格から為替レートへの因果性が見られた。 以上の結果から、原油価格は、2002年以降一貫してロシアの為替レートに影響を及ぼしてきたことが計量経済的に示されたことは大きな意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した通り、ロシアの原油価格、株価、為替レートの因果性を明らかにすることができ、重要な示唆を得ることができた。また、本研究成果は英文学術雑誌に掲載され、一定の成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、ロシアにおける金融政策の波及経路に関して、銀行貸出チャンネルが存在するかどうかを検証する。具体的には、(1)銀行の特徴により貸出傾向は異なるのか、(2)金融政策ショックが与えられた場合、貸出傾向は銀行の特徴により異なるのか、(3)世界金融危機に際して、銀行の貸出は影響を受けたか、(4)銀行の所有者により貸出傾向に相違があるか、に関する分析を行う。 分析に際しては、2005年~2012年におけるロシアの銀行のミクロデータを使用する。また先行研究に従い、銀行の特徴として、銀行の資産、流動性(流動資産/資産)、資本(資本/資産)の3つの基準を用いる。世界金融危機の時期である2008年および2009年に関しては、危機ダミー変数を加える。さらに銀行の所有者は、ロシアの民間銀行、国有銀行、外資系銀行で区別する。
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Causes of Carryover |
今年度は国際学会での発表のための旅費やデータベースの購入費用が嵩んだため、年度の途中で20万円の前倒し支払い請求を行った。前倒し支払い請求は10万円単位で行うことになっていたため、その後の備品や旅費の支出を差し引いても残額生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は国際学会での発表のための旅費や、新たな分析に際して必要となるデータベースの購入を中心に、資金を利用していきたい。
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