2012 Fiscal Year Research-status Report
同一産業内の先発国と後発国間の「競争力逆転」について:らせん形態発展仮説の再検討
Project/Area Number |
24530327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagaoka University |
Principal Investigator |
權 五景 長岡大学, 経済経営学部, 准教授 (20341993)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
経済産業省の通商白書は、最終財産業が価格競争力を失われても、日本の中間財産業は次から次へとらせん形に高付加価値化していくため、国際競争力は維持できる、と記している。しかし、日本の多くの中間財メーカーの競争力は弱まっているのが現状である。その理由を明らかにするため、貿易統計、文献調査(社史、専門書、経済誌)を中心に研究活動を行ってきた。 貿易統計の分析から分かったことは、特に、韓国と台湾の対日輸入依存度が高くその理由は中間財にあるという点だった。韓国や台湾の世界に対する輸出規模が大きくなるほど日本からの中間財の輸入が増えている。これは一見すると、らせん形発展仮説を否定することはできないようにもうつるが、実は韓国と台湾において大企業と中堅企業が国産化に成功していることを確認できた。 そして、その背景には、世界のものづくりの形が大きく変化したことも確認できた。それは、「世界規模の分業化」と「需要に合致した商品づくり」という言葉で縮約することができる。アメリカ企業中心の分業化が進行していく中で、日本企業の多くは部品提供企業へ転落してしまった。また、世界が、かつて日本が経験したような総中流ではないにしろ、中流層が発展途上国を中心として急増していたのに対し、日本の最終財メーカーはその新たな需要をキャッチできなかったのである。つまり、一国内における最終財メーカーと中間財メーカーの興亡は別々ではないため、同じ経済環境の下では日本の中間財の優位が続くことは困難と現段階では解釈している。 また、文献調査では、事実を確認する作業として経済誌を1990年代からチェックしており、韓国、台湾そして、日本企業の対応を時系列に確認することができ、研究全体をバックアップするようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的には順調であるが、現地調査がなかなか困難である。その理由は明らかで、企業側は、国を問わず予想以上に情報漏洩に敏感だった。また、情報公開の際の責任問題も非常に気にしていることも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究で、韓国のIT産業の場合、世界的中間財メーカーがすでに登場していることが確認できたが、その過程を最終材メーカーとの関係に重点を置きながら調べたい。そして、それをかつての日本の中間財メーカーの成長過程との比較を試みたい。 また、世界規模のモノ作りを変えている米国、イスラエルの企業生態系と需要拡大地域での日米韓台企業の戦略について、中間財メーカーの観点から調べたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
企業インタビューを計画通り進めることができなかったため、謝礼項目において繰越額が発生してしまった。しかし、また、挑戦してみたいと思っている。直接が困難であれば、間接的に他国の企業や専門家からでも現状について詳しく調べたい。そのために旅費(海外を含む)の支出が多くなると思われる。
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Research Products
(2 results)