2012 Fiscal Year Research-status Report
複数の属性を考慮した社会厚生の評価と再分配政策の考察
Project/Area Number |
24530345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中村 和之 富山大学, 経済学部, 教授 (60262490)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会厚生の比較 / ローレンツ支配基準 / 再分配政策 |
Research Abstract |
本年度は以下の諸点について研究を行った. 第一に,一般化ローレンツ支配基準を拡張した枠組みを用いて近年の中国における地域間格差の推移を社会厚生の観点から評価することを試みた.2006年から2010年を対象期間とした地級市データに基づき,所得,環境,医療に関係する5つの属性によって各地域の厚生水準が決定されると考え,多変量のmajorizationに基づく支配関係の有無を二つの年度間の一対比較によって考察した.その結果,2006年と2010年を比較すれば前者よりも後者の属性分布が望ましいと判断されるが,その他の年度間比較では,沿海部の環境水準が隘路となって,必ずしも社会厚生が過去と比較して改善されたとは言えないことを明らかにした.この結果は,従来,内陸部と沿海部の所得格差の拡大という観点から捉えられてきた中国の地域間格差の理解に新たな視点を付け加えるものである.また,多変量majorizationを用いた分析はその概念や厚生上の含意は広く知られていたものの,これを実際の数量分析に応用した研究は少なく,この点でも意義を持つと考えられる.分析の結果は国際学会で発表された. 第二に,逐次的ローレンツ支配基準を複数の移転可能な属性が存在するケースに拡張するための基礎的な研究に着手した. 第三に,多変量majorizationの概念を用いて,地域間の要素賦存量比率の類似性を考察する手法の研究に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,一般化ローレンツ支配基準の複数属性への拡張を図り,これを地域間格差の把握に応用した論文をひとまず完成させ,国際学会で発表することができた.また,平成25年度より開始することを予定していた,逐次的一般化ローレンツ支配基準を複数の移転可能な属性が存在するケースに拡張するための研究に着手できた. これらのことより,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降,以下のような形で研究の推進を図る. 第一に,平成24年度に得られた多変量majorizationの概念を用いた中国の地域間格差に関する研究の改善を図り,その完成を目指す.具体的には,ひとまず完成した研究成果を内外の学会や研究集会で発表して討論者や出席者からのコメントを基に論文を改訂する. 第二に,逐次的一般化ローレンツ支配基準を移転可能な属性が複数あるような形に拡張するとともに,その応用可能性を研究する.本年度の研究において理論的な定式化に関する目途はついたので,得られた結果を論文にまとめるとともに,その応用可能性ならびに再分配政策への政策的含意を得るための枠組みを構築する. 第三に,人々の厚生が複数の属性に依存している場合の再分配政策の効果を測る手法の開発に関する研究に着手する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)