2013 Fiscal Year Research-status Report
社会保障の政治経済学: 世帯構成,近視眼性,借入制約の影響
Project/Area Number |
24530346
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 哲生 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50305661)
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Keywords | 社会保障 / 高齢化 / 経済成長 / 国債 / 財政政策 / 公教育 / 人的資本 |
Research Abstract |
研究課題を遂行するために,先進国で共通して観察される高齢化(長寿化)に注目し,高齢化が政策決定に与える影響とその経済的な含意について考察した.具体的には,以下の2つの研究を行った. 第一の研究では,高齢化が家計の消費・教育投資に関する意思決定や,投票を通じた社会保障・公教育の政策選択にどのような影響をもたらすかを分析した.分析に当たっては世代重複モデルを用い,公教育と私的教育投資の2つによって人的資本が蓄積されていく経済を描写した.政策決定については確率投票モデルを用い,高齢化による老年世代の政治力の増大が政策選択に与える影響を描写した.分析の結果,高齢化によって社会保障支出が減少し,公教育支出が増大することが示された. 第二の研究では,高齢化・少子化に伴う人口構造の変化が,財政政策(国債発行,公共支出,税率)の決定に与える影響について分析した.分析に当たっては内生成長・世代重複モデルを用い,政府の活動として所得税と国債発行による公共財支出のファイナンスに焦点を当てた.政策決定については確率投票を想定し,高齢化による老年世代の政治力増大が財政政策と経済成長にどのような影響を与えるかを分析した.分析の結果,高齢化によって財政赤字がより生じやすいことを示した.また,財政赤字の下では,高齢化によって政府の公共財支出は減少し,経済成長率が上昇することが示された.さらに,社会厚生の観点から評価すると,投票によって決まる政府支出は過大で,経済成長率は望ましい水準より低くなることが示された. 2つの研究論文は,2014年度中にディスカッションペーパーとして公表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画に従った研究を行い,2本の論文を新たに完成させたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究として,以下の2つの研究を予定している.第一の研究は,失業と財政政策,経済成長の政治経済分析である.財政政策に関する政治経済分析では,多くの研究が完全雇用を想定して分析を行っている.しかし現実には失業が存在し,政策の決定が失業と経済成長に影響し,さらに将来の政策決定に影響してくる.このような,現在の政策→失業・経済成長→将来の政策決定の動学的なメカニズムをモデル化したうえで,投票による政策決定を通じて決まる失業や経済成長を社会厚生の観点から評価することが,この研究の目的である. 第二の研究は,公教育と社会保障,人的資本蓄積,経済成長の政治経済分析である.昨年度にも同様の研究を行ったが,そこで用いたモデルでは,分析の単純化のため物的資本を捨象していた.今回の研究では,物的資本と人的資本の2種類の資本を想定し,社会保障・公教育の政策決定が貯蓄,教育投資を通じて物的資本,人的資本に与える影響を見る.この分析によって,高齢化が社会保障,公教育を通じて経済成長に与える影響を評価することができると期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画的な執行に努めたものの残額1,339円が発生し,また,この残額を無理に執行する必要性がなかったため. 次年度の物品費として使用することを計画している.
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Research Products
(3 results)