2013 Fiscal Year Research-status Report
新興市場国への資本流入問題に関するマクロ的分析-世界金融危機後の新たな課題と政策
Project/Area Number |
24530350
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
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Keywords | 資本移動 / 新興国 / 資本規制 / 世界金融危機 / 国際マクロ / 国際金融 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度の研究により得られた資本流入(と流出)に関する実証的知見を踏まえ、新興市場国の特徴を明示的に取り入れたDSGEモデルの構築を行った。新興市場国の景気循環に関する既存の研究では、恒久的な生産性ショックを組み入れること(Aguiar & Gopinath 2007)に加えて、資本市場の不完全性をモデルに導入することが重要であるとされている(Garcia-Cicco et al. 2010)。こうした新興市場国の景気循環に関する最近の研究の発展も踏まえつつ、実際の新興市場国のデータにより整合的な小国開放経済のニューケインジアン・モデルを構築した。また本研究では、新興国の金融政策を行う上で、どの程度、対外債務を考慮するかという政策的な問題についても分析を行った。 また、本来は来年度の研究計画である資本規制に関する研究についてもある程度の形にまとめることができた。既に自身の過去の研究で、多くの新興市場国では金融部門が未発達である点を踏まえ、銀行といった金融仲介機関が流入した資本を有効に使うことができない場合には、資本規制が次善の政策として有効であることをDSGEモデルを用いて示している。しかし、その際は特定の国を想定せず一般的な小国開放経済モデルを用いて分析を行った。それを発展させて個々の経済の特徴を明示的に導入したDSGEモデルについて、個々の経済のマクロデータを用いてMCMCによるベイズ推定を行うことにより、より現実的で説得的な資本規制政策の厚生分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画期間内に既に成果の一つが海外ジャーナルに掲載が決まっているため、当初の計画以上に進展していると判断している。 " An Optimal Government Spending Reversal Rule in a Small Open Economy " (with Kenya Takaku) International Review of Economics and Finance, Volume 27, pp. 374-382, 2013. また、本来は次年度の研究計画に含まれていたものが、既にワーキングペーパーとして、まとめるに至っている。 " The Potential Welfare Benefit of Capital Controls: the Case of Korea " (with Yoichi Matsubayashi) Discussion Paper Series, No.DP2013-09, Kobe University March 2013.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度の研究により構築した新興市場国の特徴を明示的に取り入れたDSGEモデルに基づき、個々の政策に関する厚生分析を行う。 I.資本規制に関する研究-----既に自身の過去の研究で、多くの新興市場国では金融部門が未発達である点を踏まえ、銀行といった金融仲介機関が流入した資本を有効に使うことができない場合には、資本規制が次善の政策として有効であることをDSGEモデルを用いて示している。その際に特定の国を想定せず一般的な小国開放経済モデルを用いて分析を行った。これをさらに発展させ、韓国やスペイン経済の特徴を明示的に導入したDSGEモデルについて、個々の経済のマクロデータを用いてMCMCによるベイズ推定を行うことにより、より現実的で説得的な資本規制政策の厚生分析を行う。 II.為替政策に関する研究-----平成25年度の研究により構築した新興市場国の特徴を明示的に取り入れたモデルに基づき、固定相場制と変動相場制の各レジームにおける厚生水準の違いを分析する。 III.財政政策に関する研究-----これについては、対外借入を行う小国開放経済モデルに基づき、債務安定化政策について、既存研究で盛んに研究されてきた課税政策に加えて、財政支出の調整を政策手段として明示的に考慮し、望ましい財政政策のあり方に関しての厚生分析を既に行っている。 来年度については、こうした個々の政策の分析に加え、研究期間内に構築したDSGEモデルを基に、各々のマクロ政策(IからIII)について、各政策を組み合わせた場合のポリシー・ミックスの問題を検討し、さらにより現実的な政策評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の海外での研究成果報告の内、一部が学会から全額費用支給対象に選ばれた。また共同研究者との打ち合わせ費用の一部について、所長裁量経費によってまかなうことができた。こうしたことにより、経費が大幅に節減できた。 次年度の研究費の使用計画(直接経費)は、次の通りである。 物品費/150,000円、旅費/300,000+437,931=737,931円、人件費・謝金/40,000円、その他/10,000円 なお「次年度使用額(B-A)437,931円」については、成果報告のための海外旅費として、使用する予定である。
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Research Products
(8 results)