2013 Fiscal Year Research-status Report
クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDI:直接投資選択要因の研究
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24530357
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 健 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90405217)
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Keywords | 外国直接投資 / クロスボーダーM&A / グリーンフィールド直接投資 / 知的財産法制 / 資本市場関連法制 / 累積株価超過収益率 / 生産要素移動 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度に作成したデータセットを用い、企業が直接投資を実施する際にクロスボーダーM&Aを選択するケース、グリーンフィールドFDIを選択する場合の、それぞれの決定要因を検証した。昨年度作成したデータセットは、1999~2009年に東アジア・オセアニア諸国11カ国へ進出した日本企業について、進出相手国の経済データ、法制度関連データ、税制データと、進出日本企業の財務データ、株価データをマッチングさせたデータであり、このデータを用いた実証分析の結果、次の類似点と相違点が検出されている。 まず企業が、クロスボーダーM&AとグリーフィールドFDIを選択する際の類似点として、進出対象国の国要因である所得水準、人口規模、法人税率が、双方の直接投資の実施の意思決定に影響をもたらしているとの結果が得られている。一方で、クロスボーダーM&Aは、グリーンフィールド直接投資が、進出国の選択において、知的財産法制の発展度、既存生産・販売拠点の有無の影響を受けるのに対し、これらの影響を受けない。逆に、クロスボーダーM&Aは、株主権利保護法制度の発展度の影響を受けるが、グリーンフィールドFDIに対するこの法制度の影響は小さい。最後に、投資実施企業の株価は、クロスボーダーM&Aは、投資実施直後に株価が上昇するケースが多いが、グリーンフィールドFDIはすでに企業価値が増大した時点で選択される傾向がある、などの結果が得られている。 本結果は、近年急増中のクロスボーダーM&Aと知的財産法制環境は、関係性が希薄である一方、直接投資の大半を占めるグリーンフィールドFDIは、知的財産法制の強化から正の影響を受けることを示している。したがって、本研究結果は、クロスボーダーM&Aを誘致する場合と、グリーンフィールドFDIを促す場合では、投資を受け入れる新興国側の政策が異なるべきであることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、前年度のデータセット作成作業が効率的に進捗し、また実証分析結果も期待する成果が得られたため、ワーキングペーパーのとりまとめ作業と国際学術誌への投稿まで進めることができた。成果の一部は成蹊大学経済学会ディスカッション・ペーパー・シリーズNo.122として公表し、英国ブルネル大学マクロ経済金融コンフェレンスにおいて成果発表を行った。ここにおいて得られた参加者のコメント、その後、大阪大学金融経済ワークショップ(MEW)での報告時に得られた示唆を論文に反映し、国際学術誌(査読付き)への投稿を行った。この学術誌に投稿したこの成果の一部は、修正を経て掲載が確定し、クロスボーダーM&A関連研究の成果発表は、平成24年度に続き、2つの成果が国際学術誌より公表されている。上記の公表された2つの論文では、クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDIの選択意思決定の要因の違いについての実証結果に加え、自動車産業のクロスボーダーM&Aの実施の決定要因、中国とインドへ進出する外国企業のクロスボーダーM&Aの決定要因、の成果が報告されている。また、本研究が分析対象とする範疇外であるが、平成24年度のデータセット作成作業の過程で、東アジア・オセアニア諸国の資産価格データに関するデータもあわせて作成していたため、このデータを利用し、韓国、日本における不動産価格と家計債務の関係に関する検証も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度は、過去2年度の間に得られた成果をさらに発展させ、クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDIがもたらす進出相手国経済への影響について検証を進める。平成24~25年度の研究では、上記に示される通り、クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDI実施の意思決定に影響を与える類似点、相違点の2つの決定要因を抽出した。これらの直接投資実施側の要因検証に加え、今年度の目的は、投資受入国側への影響への違いを確認することで、それぞれがもたらす経済発展への類似点や金融リスクを検証することが分析の目的である。過去2年間の研究成果は、クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDIを選択するための決定要因の類似性と相違点に焦点を当てていたが、実施後の影響の分析を実施していない。平成26年度は、この2つの外国直接投資が、実施後にいかなる帰結を進出国にもたらすのかを分析することで、実施の意思決定要因の成果と、実施後の影響の結果、の2つについて結論度を導出する。すでに平成24年度から25年度にかけてこれらの分析に関わるデータセットを作成済みであるため、今年度はこのデータを用いた実証分析を行い、ワーキングペーパーをとりまとめ、国際学術誌へ投稿することを予定している。実施スケジュールは4月~7月にかけて推計作業を実施し、8月~10月にワーキングペーパーとして推計結果をとりまとめ、10月末から11月にはディスカッション・ペーパーを完成させる。クロスボーダーM&AとグリーンフィールドFDIという2つの直接投資の進出相手国への影響の違いに関する先行研究はすでに平成25年度にサーベイは完了している。
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Research Products
(12 results)