2012 Fiscal Year Research-status Report
アジアにおける円の基軸通貨化戦略‐貿易建値通貨からのアプローチ
Project/Area Number |
24530362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
清水 順子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換(中国) / 貿易建値通貨 / 資本規制 / 為替制度 / 決済システム / 為替市場 / 為替リスク管理 |
Research Abstract |
本研究では、まず過去の円の国際化政策が成功しなかった原因を特に貿易取引通貨という観点から再考した上で、東アジアの為替市場の現状について貿易取引という実務的な側面から特徴を明らかにすることを目的としている。24年度は、清水が参加した全銀協の金融調査研究会「国際通貨制度の諸課題-アジアへのインプリケーション-」において、清水がこれまで行ってきた日本企業の貿易建値通貨選択の研究成果をもとに「アジアにおける貿易建値通貨選択の現状と課題」というテーマで研究報告を行うとともに、アジア通貨の取引コストや決済システムに関して実務家からヒアリング調査を行った。中国元の国際化については、24年6月に日本円と中国元の直接取引市場が開設するなど実務面における円取引の円滑化を図る施策も開始され、アジア市場が徐々に変化し始めていることが確認された。協力研究相手であるCASSの孫教授からも元の国際化の進展や上海市場の状況などをヒアリングしたが、まだ開始されたばかりでその効果を測るには時期早尚であるとの判断であり、24年10月に中国出張を実施し、中国研究者とワークショップを開催するとともに、中国元の国際化戦略に対する中国側の資料収集と中国の為替市場や規制に関する調査協力を依頼した。また、企業の為替リスク管理に関する実証研究については、清水が参加する経済産業研究所のプロジェクトで実施したアンケート調査の結果をもとに2つの共著論文を発表し、日本経済学会、シンガポールで行われたAPEAコンファレンスで報告し、有意義なコメントいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、アジア通貨単位が将来的にアジア域内における貿易取引通貨として普及するという役割を想定し、その前段階としてアジアにおける貿易建値通貨として日本円をはじめとするアジア通貨が使われてこなかった理由の解明を中心として調査・研究を行ってきた。24年度は、清水が研究員として参加した全銀協の金融調査研究会「国際通貨制度の諸課題-アジアへのインプリケーション-」において、日系金融機関やNTTデータなど金融・決済実務に係る実務家から多くの貴重な情報を入手することができた。その際に、特に新興国アジアでは貿易取引の活発化を促す決済システム改革が重要であり、円の国際化推進のためには決済システムの改革が必要不可欠であることを再認識した。この点については、新たに本研究の研究課題として追加したい。 24年度は日本円と中国元の直接取引市場が開設するなど実務面における円取引の円滑化を図る施策も開始され、アジア市場が徐々に変化し始めていることが確認された。協力研究相手であるCASSの孫教授からも元の国際化の進展や上海市場の状況などをヒアリングしたが、まだ開始されたばかりでその効果を測るには時期早尚であるとの判断だったが、25年度以降の調査計画などについてディスカッションすることができた。 研究報告は、国内・海外の学会に加えて、全銀協主催のシンポジウムにもパネリストとして参加し、アジア通貨を直接取引する為替市場の創設を目指した域内金融・為替協力が必要であることを報告し、一定の成果が挙げられたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
日系企業の為替取引業務の実態についてヒアリング調査した結果に基づき(企業のヒアリング調査については、これまで清水が参加するRIETIの研究プロジェクトにおいてアンケート調査が実施された)、企業の実務的側面から円が為替取引で使われる建値通貨のニーズについて整理してきた。今年度は、RIETIにおいて企業アンケート調査第二弾が実施されることが決定した。そこで、新たな質問票作成のため、主要企業のヒアリング調査を行う予定である。前回行ったヒアリング、およびアンケート調査は円高時に行われたものであったが、昨年末より円安が急激に進み、前回とは全く異なった状況での調査となる。さらに、国際化が推進されている中国の人民元をはじめとして、日系金融機関の進出が目覚ましい東南アジア通貨の利用状況にも何らかの進展がみられるなど、様々な点で前回のアンケート調査時期と異なる面があるため、2度の調査結果を比較することで、企業の貿易建値通貨選択と為替リスク管理に関する新たな知見が得られることが期待される。新たな調査結果をもとに、本研究の課題である「アジアにおける円の利用拡大に向けてどのような施策が必要か?」を考察したい。 また、中国をはじめとする東アジアの為替市場における資本・為替規制の状況については、IMFや各国為替当局の資料に基づき整理するとともに、中国元取引の進展について、中国社会科学院とのワークショップを今秋東京で企画・開催する予定である。アジア各国の為替市場の流動性の状況や実際にはどのような実務取引が進んでいるか等については、今年度内に香港市場など海外のヒアリング調査も実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国をはじめとするアジア諸国を対象に、アジア通貨の貿易取引に関するヒアリング調査を行うための海外出張費、当該研究の研究報告を行うためのコンファレンス参加のための出張費、および論文の英文校正などを主な使途とする。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 東洋経済新報社2012
Author(s)
小川英治(編著)清水順子(5章担当)
Total Pages
259
Publisher
グローバル・インバランスと国際通貨体制
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