2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおける円の基軸通貨化戦略‐貿易建値通貨からのアプローチ
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24530362
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
清水 順子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 為替制度 / 資本規制 / 為替リスク / 貿易建値 / 基軸通貨 / 通貨の機能 / 資本フロー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アジアにおける貿易建値通貨として円をはじめとするアジア通貨が使われる可能性について考えるとともに、元の国際化の進展度合いを見極めながら円の利用を促進する道を探ることを目的としている。 最終年度である26年度には、日本企業の現地法人を対象として、貿易建値通貨選択と為替リスク管理に関するアンケート調査結果を実施し、元の国際化やアジアにおける生産ネットワークがさらに拡大した現在における元や円の役割にどのような違いが生じているのかを確認した。アジア現地通貨取引の現状については、アジア全域での中国元の利用はさほど増えておらず、今後増やそうと考えている現地法人も中国、香港に限られている。しかし、一方でタイバーツ、シンガポールドル、マレーシアリンギットなどのASEAN通貨は、ASEAN諸国の現地法人で今後取引を増やすと回答している企業が少なからずあり、さらに現地通貨対円の取引のニーズもある。ASEAN地域での日本企業を中心とするプロダクションネットワークの拡大と共に、ドルを介さずに円とASEAN通貨を直接取引できるような為替取引市場を創設すれば、ドル依存の高いアジアから脱却できる可能性があると考えられる。この点については、今後決済システムも含めた新たな取り組みについて研究を重ねていきたい。 清水が中心となって協力研究者である中国社会科学院の孫教授と毎年行っているワークショップは、2014年12月に北京で開催された。本年度のテーマは為替相場のパススルーや金融政策の波及といったより広いテーマで日本経済や中国経済、さらに日中関係に焦点を置いて実証分析を行った研究成果が双方から報告され、活発な意見交換が行われた。当初予定していた人民元の国際化の進展については、次年度以降共同研究の場を設けて、上海市場や香港市場の実地調査等を企画することで合意した。これについても、今後研究を継続していく予定である。
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