2012 Fiscal Year Research-status Report
日本市場におけるバリュープレミアム:BM対EPファクターの関係
Project/Area Number |
24530363
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
平木 多賀人 東京理科大学, 経営学部, 教授 (50208815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 株式市場 / バリュープレミアム / 経営者予想利益 / クリーンサープラス |
Research Abstract |
本研究課題の目的は日本の株式市場にはおいてはなぜバリュー効果としての簿価時価比に基づくリターンクロスセクションしかこれま統計的にも経済的にも有意とされてこなかったのかを、理論をベースに制度的要因と関連付けながら解明することであった。そのなかで、本(初)年度においては、会計学における残余利益と割引率サイドに要評価の基軸をおいたファイナンスにおける評価を統合し、予想データがある限り2つのバリューファクターは1つに収れんしないで、簿価時価比と予想益回りが実現されるリターンクロスセクションを説明しうる理論モデルまず精緻に確立した。同時にその適応性を試すうえで必要とされる詳細な日次でのリターンを含む企業属性のデータベースの構築を完成させた。年度後半においては分析をスピーディーに行い、最初の成果を論文にすることができた。 この初年度の成果では、Hiraki, A. Watanabe and M. Watababe, "The Investment Value of Management Earnings Forecasts,"としてSSRN(http://working papers.ssrn)に正式登録し、世界に向けて発信した。この論文に対しては今日まで約100人の異なる研究者からフルペーパーでのダウンロードが記録されている。これをベースにした学会報告は、2012年5月の日本ファイナンス学会年次大会、同年10月のNorthern Finance Association (カナダ、ナイアガラフォールズ)などで行った。さらには年度を通してUniversity of Technology, Sydny, 横浜国立大学、名古屋大学、京都大学などで積極的にワークショップをこなしてきた。論文としての完成度が高くなってきたので、ファイナンストップジャーナルでの掲載を目指して改定作業に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたように、初年度の成果として完成度の高い論文を社会科学、なかんずく、金融経済学(Financial Economics)では世界最大のレポジトリーであるSSRNに登録し、成果を広く世界に発信している。そして改定版は国内外の学会と大学でで発表され、それなりの評価を得てきている。したがって、現在まで研究計画は概ね順調に推移しているといえる。最終的には残り2年で、さらに研究内容をより拡充させて世界的なジャーナルから数点学術論文として完結させる予定である。初年度の成果と構築した理論的枠組とデータベースをもとに、初期計画にある残された課題は2年以内に十分達成可能と考える。さらに、ある程度予期していたことであるが、本研究推進中に以下の2論文を副産物として生み出すことができたので記しておく。 1.“Country, Industry Concentration and the Performance of International Mutual Funds,” (with M. Liu and X. Wang), November 2012 Working paper. 2.“The Value of Multinationality and Business Group for Japanese Firms,” (with J.J. Choi and A. Landi), Temple University, November 2012. これらの論文も研究の第2年目あるいは第3年目を通して最終目標である世界的に認知されているファイナンスジャーナルからの発表を目指す。この副次的目標は、おそらくすでに学会発表を世界でこなしてきたので、主目標である日本市場におけるバリュープレミアムの組織的解明に関する数点の論文の公刊よりも早く実現される可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度においては、日本の株式市場ではバリュー効果として簿価(BP比)と経営者予想利益(FEP=予想1株当り益回り)が併存し、新たに確立した理論と整合する価値ある重要な発見を行うことができた。今後はその制度的背景との関係を十分整理して発見をより頑健なものにしていく。その結果、株式市場のリターンクロスセクション研究においてこれまで統一的見解を欠いてきたパズルが日本発の研究として世界の金融経済学リタラチャ‐に一石を投じることになる。より具体的には、より精選されたデータで、モーメンタムとリバーサル効果につての実証部分を拡張・充実させていく。成果としては、世界との比較部分をも加えた論文として完成させ、ファイナンストップジャーナルからの刊行を実現させたい。 日本市場では直前数週間から数か月で測定するモーメンタム(世界スタンダードの中期モーメンタム)は存在しない代わりに顕著な短期モーメンタムが存在す。しかし、一定の経済条件下では、世界スターンダードに近いモーメンタムが存在する可能性が残されている。一方、日本市場のリバーサルは短期ではほとんど存在せず長期で顕在化する。この効果も一定の経済条件下では、モーメンタム同様、世界スタンダードと融和する可能性が存在する。今後の研究の中で、これら2のスタイライズドファクトに一般性を与え、1つのファクターとして統合を試みる。本来的には融合可能なこれらの株式市場リターンクロスセクションがなぜ、少なくとも無条件下では、世界スタンダードとはかい離するのかを制度的要因に焦点を当てて究明していく。基本的には第1年目までに構築した理論的枠組とデータベースを継続使用することが可能なので、第2年度にはペースを落とすことなく研究を進展させることができる。 第1年目に副産物として生み出したワーキングペーパーは、ジャーナルパブリケーションとして最終化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度未での使用額は次年度使用額に繰り越し、これを当初予算に追加して使用する計画である。本研究課題の生命線は日本市場および日本企業の日次での利用可能時点を明示した市場及び財務データである。平成25年度に支出予定を厳正に実行する共に、本年度から繰り越し(未使用)分はこのデータのアップデートとそのさらなる拡充に供する予定である。
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