2012 Fiscal Year Research-status Report
数値解析的一般均衡分析における最適課税論・限界的税制改革論の我が国への応用分析
Project/Area Number |
24530370
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
加藤 竜太 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (60242971)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 公共経済学 / 数値解析的一般均等モデル / 最適課税論 / 労働市場 / 失業 |
Research Abstract |
現実的な想定の下で我が国に於ける最適税制の模索と現況を前提とした現実的な望ましい税制改革論を、精緻な経済モデル(CGEモデル)の枠組みの中で提示することが当該研究の大きな目的である。この場合、特に注意が必要な改良点は、労働供給の取り扱いと、他の財との代替の弾力性値の与え方である。 平成24年度では今まで構築してきたFORTRANプログラムにおいて労働を内生化し、次にMATLABによる新たなプログラムの作成と、最適課税論・限界的税制改革論の議論が展開できるように既存のFORTRANプログラムを大幅に改良した。 一方、2月のUC(Irvine)でのコンファランスではその成果の一部を予定通り発表することが出来た。特に重要な成果は労働供給の内生化を考える場合、労働市場をどのように扱うかである。今までのCGEモデルでは労働市場に於ける完全雇用を前提としてきたが、当該研究では労働市場が必ずしも完備でない、すなわち労働市場に於ける失業の存在を前提として議論を展開した意義は大きい。CGEモデルでは実際の社会状況を前問いとしたシミュレーション分析を行うわけであるから、モデル内で想定される仮想的な経済はなるべく現実に近くなければならない。そこで当該研究では労働市場に摩擦(フリクション)を導入し、所謂マッチング・モデルで労働市場を記述し、「Fiscal Stimulus and Labor Market Dynamics in Japan」IUJ Working Paper Series EMS-2012-19,2012ならびに、「Fiscal Stimulus in an Endogenous Job Separation Model」IUJ Working Paper Series EMS-2013-02, 2013として成果を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最新の日本の産業連関表を用いながら分析の基礎データとなる社会会計表は完成された。また、今までの研究成果を踏まえ、FORTRANプログラムにおける労働の内生化と精緻化はかなりの程度まで進んできた。一方、最適課税論を組み入れた形でのプログラム作成は今までのところ進んでいない。これは労働市場をモデル内で描写する場合、労働市場のフリクション(失業の存在)を考慮した結果、予想を遙かに超えてモデルが複雑化し、最適課税論を組み入れる段階には至っていないからである。最適課税論の枠組みは労働の内生化が極めて重要で有り、労働市場に於ける失業の存在を如何にモデルに組み入れるかという点が難しい。25年度ではこの作業を終了させ、なるべく早い段階で最適課税論の枠組みを取り入れたプログラム作成に進みたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
労働市場のフリクションを今までの分析枠組みに整合的に取り入れ、労働の内生化を実現したFORTRANプログラムをなるべく早い時期に完成する予定である。労働市場で失業が存在する場合、労働の原研生産力に賃金が一致しないので、労働市場では経済学的な意味での歪みが生じている。この歪みを是正する、別な言い方をすれば効率性を高めるために最適な税制が存在するはずである。従来の最適課税論では税の累進制を議論する場合には公平性に基づいた議論が展開されてきた。一方、失業が存在するような想定の下では経済効率性の達成のみにおいても税の累進制が重要となることから、新たな視点で税の累進制を議論することが可能である。このような研究方向に大きく24年度までのモデルを拡張し、最適課税論、ならびに限界的税制改革論を議論したい。また、限界的税制改革論の議論と整合的な部分を加える部分は、効率性の議論の他、公平性についての議論が展開できるような、所得再分配に関する部分の導入を行うことが予定されている。公平性の議論には産業連関表と所得分布を前提とした新たな社会会計表の作成が必要不可欠である。この作業はすでに産業連関表をもとに作成した独自の社会会計表を再構成する作業である。この作業には相当の時間が要することが予想される。一方、異なった所得階層が存在する社会会計表を作成する作業はきわめて重要である。いったんこの作業が終了したなら、その社会会計表を利用することによって、多くの公平性に関する議論をCGEモデルで展開できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今までの研究成果に基づき、研究が拡張された段階で多くの場所に於ける研究発表を行いたい。特に国内に於ける研究発表の機会を増やし、25年度に於ける旅費に加算する形での使用を計画している。
|