2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
福井 唯嗣 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10351264)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公的医療保険 / 市町村国保 / 将来推計 / 地域格差 |
Research Abstract |
平成24年度は将来推計人口,足元の各医療保険制度の事業統計,厚生労働省の統計調査,社会保障・税一体改革成案で示された国レベルでの改革案を基に,市町村国保の医療給付費および財政見通しを都道府県単位で推計した。年度中は制度改革の具体像が改めて議論されている途中であったため,市町村国保の都道府県単位化が実現した場合の推計を行った具体的には,岩本・福井(2007,2009,2011)で用いられている会計的手法による国ベースでの医療保険財政の将来シミュレーションを応用し,2035年度までの市町村国保の財政について都道府県別の将来予測を行っている。推計により得られた知見は学術論文として取りまとめ,公表した。 市町村国保財政の都道府県単位化は,保険者間格差是正のための大きな改革ではあるが,都道府県単位化により都道府県内での格差は解消されたとしても,都道府県間格差はなお残る。実際,現行制度を前提とする将来推計により,都道府県別財政状況の今後の推移には大きな地域差があることが明らかとなった。今後20年ほど,被保険者数は全体として減少傾向を示すが,都道府県ごとにその減少ペースや推移のパターンには地域差があり,それを反映して医療給付費,後期高齢者支援金,公費負担の増大ペースも都道府県により異なる可能性があることが分かった。 当然ながら,給付を賄うための保険料負担の増加パターンも地域により異なりうる。現在所要保険料率が高い地域ほど市町村による保険料軽減率は高く,今後主に人口構成の変化により増大していくことになる保険料率の増大をそれぞれの地域がどのような形で引き受けていくかについても大きな問題となるであろうことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目標である都道府県別・制度別医療保険財政の将来推計において,まず重要となる市町村国保の将来推計の枠組みが完成し,協会けんぽ等のその他の制度における推計枠組み構築のための土台が整備できたことは重要な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年6月にも示される予定の高齢者医療制度改革の具体的な内容を踏まえ,前年度に構築した市町村国保・後期高齢者医療制度の将来推計モデルの改良を行い,制度改革による影響について考察を行うとともに,協会けんぽの財政についても将来推計の枠組みを整備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2010年国勢調査に基づく新しい都道府県別将来推計人口の公表が,東日本大震災の影響もあっていつもの公表時期よりも遅れたことなどから,推計に必要となるデータのアップデート作業が後ろ倒しとなった。そのため,資料・情報収集のための旅費等を次年度に回し,デスクワークでも可能な次年度の研究遂行準備にその分の時間を振り向けた。次年度はまずデータのアップデート作業を優先して行う予定である。
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