2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530372
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
福井 唯嗣 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10351264)
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Keywords | 公的医療保険 / 市町村国保 / 将来推計 / 地域格差 / リスク構造調整 |
Research Abstract |
平成25年度は平成24年度に骨格を構築した都道府県別医療保険財政に関する将来推計モデルをいくつかの点で改良した。第一に,被用者保険者についての財政状況を全国レベルで推計できるようにした。第二に,後期高齢者医療制度を仮に廃止した場合の将来推計がが行えるよう,後期高齢者医療制度創設直前の保険者別加入者割合等を基にモデルを拡張した。さらにこのモデルを用いた新たな将来推計により得られた知見を学術論文として取りまとめ,公表した。得られた主な知見は以下の通りである。 現行制度は高齢化率の低い自治体の保険料負担を大きくするものとなっており,今後高齢化率の地域差が拡大していけば保険料負担の格差も拡大することになる。後期高齢者支援金の全面総報酬割導入により節約される国庫負担はさほど大きい金額ではなく,それによる市町村国保支援も効果が薄い。また,地域の医療費の多寡は所要保険料に反映されない仕組みとなっており,医療費適正化への努力を保険者に求める際,その実効性に課題が残る。 仮に後期高齢者医療制度を廃止するならば,財政調整方式にさまざまな選択肢が生じる。そのうち,現行の前期高齢者交付金(納付金)を援用する方式はあまり抜本的な負担構造の見直しとはならない。一方,全制度平均の1人当たり給付費と1人当たり所要保険料をもとにリスク構造調整を行うのであれば,自治体の保険料負担と高齢化率の負の相関はなくなり,地域の1人当たり医療費が保険料に強く反映される仕組みとなる。ただし,リスク構造調整は,保険者に医療費適正化へのインセンティブを与える点で有効性の高い制度改革ではあるが,医療費適正化が進展しない場合には自動的に保険料格差が高まることになる点には注意すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は将来推計モデルを拡張し,被用者保険の全国ベースでの財政状況もモデルに組み込むことができた。本研究の最終的な目標である都道府県別・保険者別医療保険財政の将来推計に向けての準備がほぼ整った状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
協会けんぽの財政状況について都道府県ベースで推計が行えるよう将来推計モデルを拡張する。市町村国保,後期高齢者医療制度,協会けんぽのそれぞれの財政状況について都道府県ベースで将来推計および政策シミュレーションを行うことにより,各医療保険制度の持続可能性を高めるための制度改革の方向性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初25年度末に予定していた次年度研究執行準備のための資料収集を,時間配分の効率性を勘案して26年度初めに計画し直し,25年度内は今年度の研究成果のとりまとめを優先的に実施したため。 26年度の研究に必要となる医療保険制度関連の制度統計資料等の購入に使用する。
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