2014 Fiscal Year Annual Research Report
「失われた20年」における生産性低迷と税・財政政策の有効性
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24530376
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
前川 聡子 関西大学, 経済学部, 教授 (40330120)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 企業設備投資 / 企業価値 / キャッシュフロー / 株主構成 / 海外投資家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1990年代以降の企業の設備投資行動が効率的であったかどうかを検証することにある。2013年度に行った分析の結果、1990年代以降、日本企業が企業価値への効果を重視して設備投資を行うように変わりつつあることが明らかとなった。そこで最終年度である2014年度では、このような変化の背景をさぐるため、さらに詳しく日本企業の設備投資行動の要因を分析することを試みた。 設備投資に関する実証分析では、企業価値よりもキャッシュフローの方が設備投資を左右するとの既存研究が多い。キャッシュフローの方が影響力を持つ背景として、理論的には、企業経営者と外部資本家との間で設備投資プロジェクトに対する情報に差があること(情報の非対称性)や、そのような情報の差を利用した経営者側のモラルハザード(エージェンシー問題)の存在が指摘されている。 一方、1990年代以降、経済活動のグローバル化が進展し、国際競争で生き残るため日本企業は企業情報の開示や効率的な経営に取り組むことに迫られている。言い換えると、上述した情報の非対称性やエージェンシー問題の解消につながっているとも解釈できる。したがって、日本企業が企業価値を重視して設備投資を行うようになった背景に、国際化の影響があるのではないかと考えられる。 以上の問題意識に基づき、近年の海外投資家による日本企業の持株割合上昇が国際化の1つの現れであるとして、2015年度は、株主構成の変化と企業設備投資行動との関係についての分析を行った。その結果、(1)海外投資家の持株比率が40%超の企業では、設備投資はキャッシュフローには左右されず、企業価値の影響のみを受けること、(2)海外投資家の持株比率が40%以下の企業では、キャッシュフローも企業価値も設備投資に対して影響力を持つが、その影響はキャッシュフローの方が大きいことが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)